挽歌：2nd【鬼滅の刃】 (ページ13)

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列車の件でその場にいた隊士は、天元と実弥と明だけだった。
この中の誰かの鎹鴉が、師範と私の元へと知らせを届けてくれたらしい。それを聞いた途端、師範は人間離れした速さでその場を離れ、彼らの元へと駆けつけに行った。

私が遅れて着いた頃には、煉獄さんは事切れていた。

『杏寿郎……っ……』

『……！』

腹に穴が開き、左目は潰れ、頭からは血がたくさん出ている彼の前で、師範は力無く泣き崩れていた。
私はかける言葉が見つけられなくて、師範が落ち着くまでただ見ているだけしかできなかった。

『師範……』

『上弦の参は、俺が着いた頃にはいなくなってた……。乗客は誰も死んでないよ。杏寿郎がみんなを守り抜いたんだ。凄いよ、本当に。俺の自慢の同期で……親友だ』

彼は泣き腫らした真っ赤な瞳をまた潤ませながら、無理矢理笑顔を作っていた。

『帰りましょう。残り作業は私がやっておきます』

『うん……ごめん、A』

『今日はゆっくり休んでください』

先に師範を帰らせてから、私はその場で隠の人たちの手伝いをする。
今は私といるよりも、早く帰って本当に心を預けられる人のそばにいた方がいい。

『A様……！』

名前を呼ばれ後ろを振り返ると、天元を背負った隠がこっちに走ってきた。

『よっ、A』

『天元！傷は大丈夫……？』

『俺は平気。けど実弥と明は俺より結構重症で、今は隠から治療受けてる』

『そっか……でも無事で良かった……』

『おう。それと……煉獄さんから最期の言葉を預かってる』

『っ！』

『また後で伝えるから』

『うん、わかった！』

ある程度手伝える事が終わり、私も帰路に着く。
そして一週間後、天元と不死川くんの病室に私だけ訪れた。
明は回復が早く、彼らより先にここを出て今は甘露寺さんの屋敷で療養しているらしい。

『これ差し入れのお菓子。高級品なんだって〜』

『やった〜！』

天元が目を輝かせながら、唇をほころばせた。
眠っていた不死川くんが目を覚まし、ゴソゴソとかけてあった布団を退かしながら起き上がる。

『……味は？』

『甘いよ！絶対に不死川くんの口に合うと思う！』

『ふ〜ん』

彼も満更でもなさそうな表情で私の持ってきた菓子折りを見つめ、ソワソワとしだした。

『せっかくだし、今食べちゃう？』

『そうしようぜ！』

『丁度小腹も空いてきたしなァ』

そうして三人で他愛の無い話をしながら、師範が来るまで時間を潰す事にした。