57:反復動作_1 ページ12
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「そうだA、額見してみ」
「はいどうぞ」
右手で前髪を上げて、言われた通りにおでこをせる。
「ん〜、まだ痣ねぇな」
「そっか〜。やっぱり師範みたいに火傷して、無理やりつけようかな」
「やめとけやめとけ、それは炭治郎が悲しむ。あと女の子は無闇矢鱈に顔を傷つけたら良くないだろ」
「でも……」
「焦る気持ちはわかるけど、努力次第で痣は出るから」
「うん〜」
どうせ今のところお嫁に行く予定も無いし、おでこなら前髪で見えなくなるから多少なら大丈夫だとは思ったのだが、玄弥くんの必死の静止を振り払ってまでやりたくは無い。
それに師範が悲しむのはもっと嫌だ。
「玄弥くんも岩の訓練やってるの?」
「うん。もう終わってる」
「えー、凄いね! 何かコツとかあるの?」
「うーんと……Aはどこまで炭治郎に教わってんだ?」
「実はよくわかんないんだよね。師範って説明下手で放任主義から……大体目で盗む感じなの。教えてくれたとしても擬音多めだし」
「あ〜」
「だからわかんない事があったら、基本的にはしのぶさんかカナヲさんに言語化を頼んで教えて貰ってる」
玄弥くんも思い当たる節があるのか、納得した様に頬をかいた。
「なら普通に教えるわ。Aは"反復動作"ってやってる?」
「やって無い! と思う」
「Aはなんか好きな言葉とか、心に響いた言葉あるか?」
「好きな言葉?」
「そう。反復動作はまず集中を極限まで高める為に、予め決めておいた動作をするんだ。俺の場合は念仏を唱えることだな」
「あっ、悲鳴嶼さんも言ってるよね!」
「そうそう、南無南無言ってるだろ」
玄弥くんが悲鳴嶼さん真似をしながらふと笑い、私も釣られて笑ってしまう。
「だからAもそういう言葉を決めておいた方が良いと思う」
「ありがとう、参考にしてみる!」
「おうよ」
玄弥くんと別れて小屋に戻り、いつもより遅めの夕食を摂る。
「心に響いた言葉……」
(誰の言葉が良いんだろう。お世話になった人……?)
私がお世話になっている人を思い浮かべていく。
最近だと柱の方々、同期の二人、蝶屋敷のみんな。
獪岳さんと、師範。
「……」
でもやっぱり、煉獄さんの言葉が良い気がする。
私を初めて助けてくれようとした鬼殺隊の隊士。
あの時、誰よりも真摯になってくれた人。
私が最初に憧れた人。
煉獄さんが死んだ日、私はその場にいなかった。
上弦の鬼が来るとは思わず、近場で師範と別件の鬼を倒していた。
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作者名:ゼパル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/bf379540b81
作成日時:2023年8月24日 23時