47:居場所_1 ページ2
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冨岡さんの御屋敷の裏にある小さな扉をそそくさと擦り抜け、彼の後について行く。
大きな庭の中を通り、玄関から彼の屋敷へと足を踏み入れる。
広い屋敷の中を迷子にならないようにと手を引かれ、日当たりが良さそうな縁側のある一室に通された。
畳の匂いと、微かに残るお日様の匂いが混ざりあって、とても心地の良い香りに包まれる。
冨岡さんに炬燵の中に入って待つように促され、言われた通り荷物を置いてから炬燵の中に足を潜らせる。
「飲め」
戻ってきた冨岡さんが炬燵の上にお茶を置いて、向かい側に潜り込んだ。
まだこんなにも肌寒い季節だ。
こうなっては中々炬燵からは抜け出すことが出来ない。
「冨岡さん、なんで合同強化訓練に柱として参加してないんですか? 昨日も言いましたけど、私は冨岡さんと稽古がしたいです」
暖かい緑茶を啜りながら、単刀直入に聞いてみる。
師範以外の水の呼吸使いとの稽古は、鱗滝さん以外ではしたことが無い。使い手が沢山いる中で、一番水の呼吸を上手く使い、新しい技を生み出してしまうほどの才能が有る冨岡さんの話を聞きたい。
「俺は水柱じゃない」
「……は?」
彼の突拍子の無い発言に、思わず緑茶を吹き出しそうになった。
これは冨岡さんにとって自分の実力では水柱と言えないという意味なのか、それとももっと別の意味が込められているのか。
「俺は最終選別を突破していない」
「……どういう事ですか? 最終選別を突破しないと、鬼殺隊に入れないんじゃ?」
私が呆然としながら聞くと、今度は冨岡さんがお茶をすすりながら話し出した。
「お前の言う通りだ。だが俺は違う。あの年に俺は、俺と同じく鬼に身内を殺された少年……錆兎という、宍色の髪の少年と共に選別を受けた。13歳だった。同じ歳で天涯孤独だった俺たちは、すぐに仲良くなった。錆兎は正義感が強く、心の優しい少年だった」
冨岡さんがほんの一瞬だけ天井を見上げ、息を吐いた。
「……あの年の選別で死んだのは錆兎一人だけだ」
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作者名:ゼパル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/bf379540b81
作成日時:2023年8月24日 23時