#47 ページ47
「Aー」
「わっ、ちょっと、邪魔するなら手伝わない」
「いーじゃん、ほぼ片付いてるんだし」
段ボールを抱えている私に後ろから抱きついて頭に顎を乗せてグリグリしてくる。
今はやめて欲しい理由がきちんとある。
なぜなら、今は蓮の引越しの準備をしているからだ。
会社には知れ渡っているし、それでも公私混同しないという約束を貫いた私達は幸いにも部署異動に引っ掛からずに仕事をしている。
「会社だとアンタら、先輩後輩にしか見えないわ」
「仕事は仕事、プライベートはプライベートだから」
「あの目黒くんが素直に応じるとは思えないけどねー」
千景はそう言っていたけれど、蓮はきちんと理解していた。
そして私に、いつまでも深澤さんにお守りされているところじゃ無くて自立して仕事をしているところを見て欲しいらしい。
傍から見ても贔屓目抜きでも、彼はココ最近でとても自立したと思うのだけど
それを言おうとすると、納得しない顔をするから言わないことにした。
「それ手伝います」
「ありがとう。これコピーお願いします」
「何部ですか?」
「30…いや、20でいいや。お願いします」
そしてこれが会社での私たち。
今、私に甘えきっている蓮と蓮を甘えさせてる私の姿じゃ想像できないほどに淡白な会話と態度。
稀に、私が阿部さんに手を掴まれたり
深澤さんに抱きしめられそうになると
____「ふっかさん、次は無いです。"俺"のAさんなんで」
「わ、悪かったって。ほら、昔の癖で」
「だめ、直してください!」
____「阿部ちゃん!俺のAさんの腕掴んじゃダメ」
「お前のAだって分かってるって」
普段通りの彼に戻ってしまうのだけど。
ただ周りの人達が優しいから、仕事中があまりにも淡白で心配になるということで
蓮のコレが出ると安堵するらしい。
周りに本当に恵まれてよかった、と安堵している場合では無い。
「蓮、そろそろ本当に間に合わない」
「じゃあ、ちゅーしていい?」
「引っ越し終わったら好きなくらいできるじゃん」
「だめー、俺の部屋で最後のちゅーしたい」
こう始まったら私に止める術なし。
いいよとまた甘やかしてしまうと
「ん…は。可愛い、もっとしていい?」
「…引越し業者さん来ちゃうから____んっ」
「聞こえなーい」
引越し業者さんが来ると言うのに、聞いちゃいないのこの人は。
1068人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
かず(プロフ) - こんにちは!ドキドキしながら読ませていただき、2つ分、一気読みしちゃいました!これからも更新、楽しみにしています! (4月21日 11時) (レス) id: 69d89bba8e (このIDを非表示/違反報告)
清乃(せいの)(プロフ) - わたあめさん» わたあめさん!コメントありがとうございます!とても嬉しいです!頑張ります!これからもよろしくお願いします! (3月17日 19時) (レス) id: 4f36815b2b (このIDを非表示/違反報告)
わたあめ - 続き楽しみに待ってます (3月17日 16時) (レス) @page30 id: c3da2a518a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:清乃(せいの) | 作成日時:2024年2月20日 9時