お隣の諸伏くん

お隣44日目 ページ47

『ふんふーん、お母さんおはよう！』


「おはよう、ほら、早く座って」






昨日言った通り、お母さんは既に道具を用意してスタンバイしていた。




昔からお母さんに髪を結ってもらうのが好きだった。





お父さんの手は怖いけど、お母さんの頭を撫で付ける優しい手が大好きだったから。








『今日ね、2人には内緒でプレゼント買おうと思ってるんだけど、何がいいかな？』




「ん〜？Aが渡したものなら何でも喜んでくれるわよ。あの子達だけじゃないわ、人は人から貰った気持ちを大切にできるんだから」







お母さんの言い回しが好きだ、諭すような声で、優しい声で物を教えてくれる。





私の知識欲は多分、お母さんの影響だ。






お母さんも本を読む人だったから、語彙が頭の中に幅広く用意されている。






その中で私に合う言葉を選んで伝えてくれる。





私に伝えるために、考えて教えてくれる。





そんなお母さんの言葉を私は理解したいから必死に本を読んでいた。







『お母さんも？』




「当たり前じゃない、でもAが人を思いやれるような優しい子になってくれて私とっても嬉しいんだから。それだけで立派なプレゼントよ、ありがとう」







どうしてこの人はこんなに暖かいんだろう、私は父親と言うものに恵まれなかった分、お母さんにはすごく恵まれてる。





感謝をするのは私の方だ。





だって私がこんなに幸せでいられるのはお母さんが幸せをくれてるからなのに。






『そっかぁ…うん、へへAもお母さんの子供になれて嬉しい』





小声になってしまったためお母さんには聞こえなかったらしく、私は慌ててなんでもないよと首を振った。

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