お隣の諸伏くん

お隣1日目 ページ3

『声が出ないの…？どうして？』

「…」


「そうねぇ、とっても悲しい事があったの。でも、この子とても優しい子だから仲良くしてあげてくれる？」




おばさんにそう言われ諸伏くんを見る。


お母さんに慌ててこら、って怒られたけど私にはそれがどうしてかは分からなかった。



けどその時、諸伏くんが悲しげな顔をするから私も少し悲しくなったのは覚えてる。




『…あ！！』



ぽんと頭に浮かんできた私なりの仲良くする方法。



「え、A！？」





お母さんが何か言ってるのもその時は聞こえなくて必死にばたばたと階段を駆け上がって自分の部屋にむかう。



そのまま机の大きな引き出しを開けて取り出したのは新品のノート。




『んーと、………出来た！』




いつもより少し丁寧に書いたノートの表紙には
【こうかんのーと】の文字。


最近友達の間で流行っているのだ。




『おかーさん！…あれ？諸伏くんいない！！』



「もう、Aがいきなりいなくなるから帰っちゃったわよ！景光くん悲しそうだったわよ？」




『んえ！！ほんとに…？』





初めてあったばかりだけど、悲しいお顔が見たくなくて考えたのに、結局悲しい気持ちにさせちゃったんだ…。



「それ、書いてたの？」



『うん…諸伏くん悲しうな顔してたから…』





お母さんが困った顔をしたと思えば、優しい顔になって私の持ってるノートを指さす。




「そう、景光くん、今日はお家でゆっくりするって言ってたわ。謝りに行く？」




『…うん！行く！！』

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