追想 ページ15
俺の持っている中で1番古い記憶はおよそ10年前、7歳の時だった。
何故かはわからないが、俺は眠っているところを大人に抱きかかえられ、そのままどこかへと連れていかれた。
薄く目を開けると、人の顔が見えた。ぼんやりと曇っていた視界で顔立ちはわからない。
黒い髪と服。硬い胸の感触で男だとわかった。
洋服越しに伝わってきた体温が心地良く、俺はいつの間にか眠ってしまっていた。
目が覚めると、白い布団に包まれていた。
天井と壁も白色だ。
あの時は来たことがなかったからここが何なのかわからなかったが、今思い出せば病院なのだとわかる。
ベッドの周りには大人が数人立っていた。
屈強な体格の男性が2人に、優しそうな女性が1人。
この人達も、今思えば警察なんだと考えついた。
女性が柔らかな音色で訊いてくる。
「何があったか覚えてる？」
首を横に振るしかなかった。
だって、覚えていなかったのだ。
何があったのかどころか、俺が今まで何をしていたのかも、どこにいたのかも、自分のことも…家族のことも。
全部、ぜーんぶ。
いくら記憶を漁っても、白紙のページを捲っても捲っても何にも書いていないように、何一つ思い出せない。
だから、この人の質問には全く答えられなかった。
しかし女性は困ったように笑いながらも、どこか納得した様子だった。
「その左目はいつから見えないの？出産記録では、何の障害もないと書かれていたけど」
「……え？」
俺は左目のある箇所にそっと触れる。
肌を触ったような感じはない。
あるのは、左目を覆っている眼帯のガーゼの感触。
女性に言われて初めて左目の現状に気付いたのだが、どうしてか左目が見えないことに俺は激しい違和感を覚えた。
俺は今まで普通に左目も見えていた筈だ。
記憶はないのに、自然とそう思った。
…じゃあ、どうして見えないんだ？
「ああ、大丈夫、大丈夫よ。無理に思い出そうとしなくてもいいから」
俺が必死に思い出そうとしているのを見て、女性はそっと止めに入った。
やっぱり女性は、そのことも1人で納得していた。
結局女性は一通り質問し終えて、最後に俺の名前を伝えて去っていった。男性2人も一緒に。
俺はその後、親戚に引き取られた。
やはり俺にはその人達にも覚えがなかったが、そんな俺をやけに優しく迎え入れ、育ててくれた。
俺はそれがとても居心地が悪くて、中学卒業後、県外の高校に入学することでその家を出て行った。
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ハルキ - いくら中性的で女に間違われるからって...男の娘とは言わないと思います...(男の娘地雷ッス←関係ない) (2021年10月11日 21時) (
レス) @page22 id: 8862a535cf (このIDを非表示/違反報告)
アリア - なんで儂好評価してないんだろ。バカか (2019年7月12日 17時) (レス) id: 39676cde20 (このIDを非表示/違反報告)
Ratte*らて(プロフ) - 面白いです…！！！100個目の評価は頂きました←。更新頑張って下さいね！陰ながら応援しております。 (2019年3月19日 15時) (レス) id: 9c512a775a (このIDを非表示/違反報告)
アーテル(プロフ) - らいさん» 返信遅れて申し訳ありません。コメントありがとうございます。時間を見つけて書き進めていく所存ですので、今後ともご愛読の程宜しくお願いします。 (2019年3月18日 15時) (レス) id: 5f656bed23 (このIDを非表示/違反報告)
らい - 続きが気になります。
続き楽しみにしています。 (2019年2月23日 16時) (携帯から) (レス) id: 2b97e5f6a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：アーテル | 作成日時：2019年1月3日 14時
