夢番地 *black* (ページ7)

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目「待って」

お願い、離してください。
そんなこと言えるわけもなくただ立ち尽くすことしかできない。

目「なんで伊藤さんが謝るの？」

「え、？」

予想すらしてなかった質問に思わず目黒くんを見てしまった。

目「...ふふっ、やっと見てくれた」

「、っ」

目「伊藤さん、何も悪いことしてないよ。
むしろ謝らなきゃいけないのは俺らの方だし。」

「、、ーーから、」

目「ん？」

「ボール、なげちゃったから、っ」

ーー手渡ししなくて、ごめんなさい

消えてしまいそうな声だったと思う。

腕を掴まれたままなのも、
変わらずまっすぐ見てくれることも、

全部が恥ずかしくて
絞り出した声と同じように自分も消えたくなった。

目「伊藤さん、優しいね」

そんなこと気にしてくれてたんだ。

そういった目黒くんは席を立ち上がって、そのまま私を連れて教室を出ようとする。

「、！ぁの、ちょっと、待って」

目「次の教室まで一緒にいこ。」

私よりも随分背が高い目黒くんが、まるでいたずらっ子のような笑顔で私の顔を覗き込んでくる。

こんなことしてたら
また昨日のように視線を浴びてしまう。

周りの女子からヒソヒソと
何か言われていることに気づいた。

「ひとりで、行くから、、」

目「えー、やだ。」

クラスの男子たちからは冷やかしの声が上がりはじめたけど、そんなこと気にもとめない目黒くんにそのまま教室から連れ出されてしまった。

「あの、目黒くん、！」

目「おぉ、俺の名前知ってくれてたんだ」

「それは、隣の席だし、、」

目「あははっ、よかった。」

今の会話の流れで何かよかったことがあっただろうか。

目黒くんは不思議な人だ。

目「俺、伊藤さんともっと仲良くなりたい」

「...え？」

目「だから、そのつもりでよろしく」

そう言ってまた眩しい笑顔を向けてくれる。

掴まれたままの腕から伝わってくる温かさが
私の冷え切った部分を溶かしてくれそうな気がしたんだ。