夢番地 *black* (ページ47)

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ラウールside

練習試合には勝ったのに、なんとも後味の悪い気分で。

伊藤先輩が、
誰もが知ってるあのスーパースターの娘さんだったなんて。

まず普通にそれがびっくりだったけど、今までの伊藤さんを見てたら確かに腑に落ちることばかりだった。

伊藤選手が亡くなったことは、世界中のサッカーファンの間で衝撃が走った出来事だったし、プレー中の不慮な事故を一部の人によって心無い言葉が拡散されて、、

結果的に偉大な人を失うことになった出来事はまだ記憶に新しいことだった。

っていうか、相手の学校って伊藤先輩が通ってたところだったとは知らず。

あんなコト言ってくるなんて信じられなかった。

夜ご飯のために集まった食堂には、
めめ君と伊藤先輩の姿はない。

あのままどこかに行ってしまった先輩は近くの神社にいたようで、めめ君がいてくれるなら一安心だ。

コーチ「伊藤のことだが、」

あまりにも酷い出来事だっただけに向こうの顧問に忠告をしたと。

それを知った顧問は青ざめた顔をして平謝りだったらしいけど、コーチもさすがで「私に謝られても困ります」と返し、今後彼女を傷つけることがないよう生徒たちの指導を改めてお願いしますと話してきたことを僕ら部員に伝えてくれた。

コーチ「お前らも、しっかり心にとめてほしい。」

香山「...当たり前ですよ。
伊藤ちゃんのこと悪くいうやついたら即退部させるからね。」

ラウ「香山せんぱい、」

めめ君が伊藤先輩を追ったあと、香山先輩は向こうの奴らに詰め寄ろうとして必死に止めた。

それでも悔しくてたまらなかったのか香山先輩はさっきまでずっと泣いていて。

少し重い空気の中、夜ご飯が始まった。

ーーーガラガラッ

しばらくして、食堂の扉が開く。

めめ君に手を引かれて入ってきた伊藤先輩の顔は明らかに泣いた後の顔で。
いつもよりさらに小さく見えた姿に心がキュッと痛くなった。

香山「いとうちゃんっ、、！」

香山先輩が伊藤先輩を力強く抱きしめる。

コーチからも、もし良ければこれからもマネージャーを続けてくれないかと声かけがあって。

「これからも、よろしくお願いします、」

伊藤先輩はそう言って僕らに頭を下げた。

すると、、

『いや、おかしいと思ってたんだよ！』
『前にグラウンドで胸トラップとかしてたの伊藤さんでしょ！？』
『俺らよりボール捌き上手いのとか勘弁してほしいっす、、』
『、、あの握手とかって、、』

香山「あんたら馬鹿かっ！」

ほんと僕らのチームってこういうところが良いとこで。