夢番地 *black* (ページ5)

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俺の後ろにいる部員たちも息をのんでいるのが分かる。

なんならグラウンドの周りを走り込みしてた野球部の奴らですら足の動きを止めていた。

あまりにも美しかったボール捌きと

それが伊藤さんであったことに

俺の中の何かが急に燃え上がってくる。

これってもしかして、

俺が待ってた＂きっかけ＂じゃないか？

目「伊藤さん！」

ボールを受け取るとき「すごいじゃん！」とか「サッカーできんの？」とかなんか会話ができると思ってウキウキして駆け寄っていたら、

「ごめん、なさい！」

と、謝りながらロングスローイングの形で俺に投げ返してきた。

ーーーーえっ、、、

いや、この感じ
早くも2回目なんですけど。

結構距離があったはずなのに、寸分の狂いもなくポスッと俺の元へ収まったボールに呆気に取られていたら、声なんかかける間もなく頭を下げて走って行ってしまった。

お辞儀するとか、ああいうとこ律儀で可愛いよな。
ってゆーか、足も意外と速いじゃん。

なに、このギャップ。
やばいだろ。

俺はいつまでも走っていく後ろ姿を見つめていた。

ラウ「ちょっと、めめ君っ！！」

ぼーっとしてたら1年のラウールが俺の元に走ってきた。

ラウ「あの人誰っすか！？知り合いっすよね！」

目「うん、隣の席の子」

ラウ「最後のスローイングとか
俺よりも上手くなかったですか？」

目「、たしかに」

『おーい！目黒ー！ボールくれーー！』

彼女がいなくなったグラウンドは、また時が動き出したかのようにせわしなくなっていた。

目「、？」

足元にある白い紙が2枚。

そこには部活動の案内と入部届と書かれていた。

ラウ「これさっきの人のだ。
わざわざ全部置いて投げてましたから」

目「ふふっ。」

ラウ「...なんかめめ君嬉しそう、」

目「え？んなことねぇよ。
ほら、練習戻んぞ。」

うそ、めちゃくちゃ嬉しい。

普段だったら学校のプリントを丁寧に扱うことなんて絶対にないけど、コレは別だ。

綺麗に折ってバッグに入れたのを確認してからフィールドに戻った。

これで、本当に＂きっかけ＂ができた。

明日話しかけるんだ。

こっからは、いつもの俺でいこう。

今日は最高の一日だ。