夢番地 *black* (ページ39)

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それなら私にできることはなんだろう。

彼が後半も走り切れるように、
ゴールを揺らせるように、

私にできることは。

気づいたときには救急箱を抱えて声をかけていた。

最初はびっくりしてるようだったけど、無理やり見せてもらった左足は少し赤みを帯びだしてきていて。

このまま後半にいくなんて絶対だめだ。

それに、目黒くんのマッチアップを見て
少し気づいたこともある。

きっとゴールを取るチャンスはある。

ーーー負けたくない

たかが練習試合だろうと。

それは目の前の目黒くんも同じ気持ちだろうから。

ほんの少しの助けにしかならないであろうテーピングに心を込めた。

それに今日は目黒くんが誘ってくれた日だから。

もしも無理して歩けなくなって出かけられないのは少し淋しく思えて。

半分は私のわがままかもしれない。

でもそれでもいいって思ったんだ。

『誰かラインズマン代われますか？』

さっきまでやっていた先輩は熱中症になってしまったみたいでベンチに横になって氷のうを当てていた。

できる人はみんな控えにまわってるし、、

ーーー私にできること

やりたい、全力で。

「私、できます」

最近思うんだ。

やっぱり私はサッカーが好きなんだって。

どんなに離れてみようとしても結局アノ人の子なんだもん。

ボールすら見たくなかったはずなのに、やりたくないって思ってたマネージャーですら気づいたらこんなにも真剣にやってて。

ましてや1対1で自分からボールに触れたりなんてして。

それはぜんぶ、目黒くんのおかげだ。

彼が走るなら、私も走る。

フィールドに向かい、フラッグを握りしめてサイドラインに立った。