夢番地 *black* (ページ26)

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今日から3日間の夏合宿を経て、いよいよインターハイ初戦へと挑むことになる。

コーチ「全員バス乗ったなー。出発するぞー」

部員が乗り込んだバスの中は早朝だというのに賑やかで。

まるで修学旅行のような雰囲気だった。

ーーー合宿の行先は「静岡」

だいじょうぶかな、、

複雑な気持ちだった。

まさかサッカー部として戻ることがあるなんて。

数ヶ月前の私には考えられないことだったから。

目「伊藤さん、これ食べる？」

私と香山先輩は一番前の席に座っていて、
そのすぐ後ろには目黒くんと村上くんが座っている。

出発してまもなく座席の隙間から声を掛けられて振り返ると、目黒くんがお菓子の袋を持って見せてくれていた。

香山「早くない？お菓子食べんの」

目「えー、いいじゃないっすか。先輩も食います？」

香山「いらない。伊藤ちゃんは？」

「えっと、」

目「ん、どーぞ。」

ラウ「あはっ！強制じゃん！
先輩、いらなかったらいいんですよー？」

「いただきます、」

目「ふふっ。うまいよ」

「ありがとう」

ラウ「俺も食べたい！」

目「お前ほかのやつあんじゃん」

目黒くんはたくさんの駄菓子を持ってきてるみたいで、村上くんにこれはこーゆーのでって一生懸命説明してる。

でも村上くんはあんまり興味がないみたいで適当な相槌を打ちながら自分で持ってきたものを頬張っていて、、

これじゃあ側から見てるとどっちが先輩かわからない。

しばらくバスに揺られれば、ついさっきまでの賑やかさが嘘のように至る所から寝息が聞こえる。

着いたら各自の部屋で荷物の整理をしたらすぐ練習が始まるだろうし、今のうちに寝ておくのが正解かもしれない。

でも私はというと目的地の静岡に近づくにつれて、なんとなく胸の奥がグルグルを渦巻いてきてしまって。

最近はこの感覚なかったのにな、、

窓の外、映りゆく景色を見ながら少しでも心が落ち着きますようにと自分の手を握った。