夢番地 *black* (ページ21)

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目黒side

まだ集合まで1時間くらいある。

カゴを適当に置いて、とりあえず少しアップしようと3周くらいグラウンドを走る。

ゴール前へと戻っていけば伊藤さんはすでにいくつかのボールを出してくれてて。

本当にこの子は俺のやってほしいことをわかってる。

とりあえず、ひとカゴ分フリーキックを蹴ってボール拾い始めると当たり前のように伊藤さんも手伝ってくれた。

ふと伊藤さんの方を見ると、

ネットの奥に入ってしまったボールを器用に足で引き出して、そのまま足の甲でボールを弾ませれば、足の側面を使ってリフティングして自分の手の中にボールを収めた。

少しだけど伊藤さんとの距離は縮まってきたと思う。

今日なら、聞いてみてもいいのだろうか。

どうしてそんなにボールを扱えるのか。

明らかにサッカーをやったことがあるはずのソレはマネージャーとしての動きをみてもそうだ。

でも、なんで俺は、
それを素直に聞くことができないんだろう。
自分でもわからない。

バカな俺は、頭よりも先に身体が動く。

言葉にしにくいことは動いた方が早いと直感が働く。

伊藤さんの服装をチェックする。
すでに練習着に着替えてるし足元もスニーカーだ。

ーーーよし、

ガッ、、

俺はボールを1つ、伊藤さんの目の前に蹴った。

「、、？」

急なことでびっくりしてる伊藤さん。

でもちゃんと足でボールを止めていて。

その姿すら様になっていて、俺は意を決して伊藤さんの方へ走り込む。

「ぇ、！？」

目「ふふっ、」

まだびっくりしてる伊藤さんだけど、さすがというべきか俺に取られないように半身を切ってボールをコントロールしている。

奪おうとその距離をつめていくと、伊藤さんも状況を理解したのかさっきよりも深くボールを自分の足元へと収めていて。

足裏でボールを転がしながら俺との距離を測っている。

そう、俺は勝手に1対1を仕掛けた。

サッカーやったことあるの？
なんて、聞くよりも早いと思ったから。