かわらないもの *blue* (ページ39)

今日:18 hit、昨日:50 hit、合計:214,154 hit

. ページ39

.

酔った勢いってすごい。
寂しさに浸りながら片付けまでしちゃうなんて。

手に取ったユニフォームを畳んで、そばに置いてあった紙袋に入れる。

フィギュアやポストカードも片付けようとすると、

横から急に手が出てきて＂あるモノ＂を掴んだ。

この部屋には私と翔太しかいないんだから、その手は翔太のもので。

そして掴んだのは、

あのリストバンドだった。

ーーやばい、

忘れてた。これを置いてること。

一気に酔いが覚めて、顔を上げれば意外にもすぐ近くに翔太がいて。

「いや、あの、それは、」

翔「なぁ、」

今だにそれを持っていたなんてどう思うんだろう。
引かれちゃうかな。

翔「...これも、片付けんの？」

「ーーー、」

なぜか翔太も寂しそうな顔をしていて、そのまま私の手を取ってリストバンドを握らせてくる。

どうしよう、

期待しないとか、同じ轍は二度踏まないとか思ってたのに。

ーー好きだ

わたし、翔太が好きなんだ。

高鳴る胸の音は治ることはなく加速する一方で。

「これは、」

翔「片付けんなよ」

「でも、」

翔「...とっくに捨てられたと思ってた」

「...っ、」

翔「でもココにあった。
めちゃくちゃ、嬉しかった。」

なんで、嬉しかったの？
ただ懐かしいから？

それとも、

バカ、バカ。
だから、期待するなって言ってるじゃん。

言われてるんだから。

ーー＂あるわけない＂って

それでも本人を目の前に言われてしまえば、片付けるという選択肢は消えるわけで。

「青春は甘酸っぱい味」なんて表現があるけど、本当にその通りだと思う。
私にとって、いつまでも＂春＂はこないけど。

ある程度のグッズを片付けた棚に
たった一言言われただけで
ポツンとその＂青＂だけを残すなんて。

笑っちゃうよね、単純すぎて。

それでも
何年経ってもソレが消えることはない。

やっぱりね、
ずっと変わらないものもあるって改めて思うんだ。

涙が止まらないほど、

ーーーまだこんなにも翔太が好きなんだ