かわらないもの *blue* (ページ23)

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無意識だった。

片付けてるときに持ってたボールを気づいたときにはネットに向かって投げていて。

ーーもう1本だけ、

そう思ってフリースローラインからシュートを打つと、久々の感覚に嬉しくなってつい夢中になってしまった。

そこに一番見てほしくない人がくるなんて思いもせず。

その場を去ろうとしたけど、まさかの賭けを提案されて、断ればよかったのになんとなく承諾してしまった。

ほんの少しだけあの頃に戻りたかった、のかもしれない。

何度この勝負をしてきたんだろう。
ルールは変わらない。

得意のフリースローだ。感覚も変わってない。
3本とも入る。そう思ってた。

3本目のボールを放つ瞬間、右膝がピキッと痛んだ。

その僅かな衝撃によって距離感がズレたボールは、リングに当たることなく手前に落ちた。

手前か、、

外すとはいえショートするなんて私にはありえなかった。
たった数十本のシュートだけで痛み始めた右膝に嫌気がさす。

ゲームに参加しなくて良かったと心の底から思った。

あぁ、だめだ。なんか黒い気持ちが渦巻いてくる。

きっと飲み会の場でも、また立石にイジられるだろうし。

私の気持ちは耐えられるだろうか。

でも、賭けに勝った翔太の喜ぶ顔を見て、この瞬間だけはあの頃に戻れたように感じて救われた気分になった。

ーーー

立石「あいざわー」

「...なに」

立石「ぜんぜん飲んでないだろ」

「いや、見て？めちゃめちゃ飲んでるから。」

さすが体育会系の飲み会。

とにかく飲むペースが早くて、グラスが残り一口になる頃には新しいお酒が運ばれてくる。

割とアルコールは強い方だけど、さすがにこのハイペースにはついていけなくなっていた。

立石も酔ってきているのか、とにかく色んな人に絡んでいて。

ついに絡む標的が私にまわってきた。

立石「おれはね、ほんとにびっくりしたんだって。
急にかわいくなっちゃっててさぁ、」

「はは、ありがとう」

立石「なぁ、彼氏いんの？」

「ちょっ、と。飲み過ぎだって。」

いきなり肩を組まれて引き寄せられる。
注意したことが癪にさわったのか、お前も一緒にコレを飲めとテキーラを差し出されて。

いや、もう無理。
そう思った私は適当に理由をつけてトイレに逃げ込んだ。

「はぁ、」

なんか気疲れがすごい。

そろそろお開きになるしもう少しの辛抱だと覚悟を決めてトイレを出れば、まさかの立石が待っていた。