検索窓
今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:1,504 hit

記憶 ページ1

.





『借金があるようじゃ』

『従っていればいい』



 夜の色に染まった小さな部屋の中。

 いつも通り、眠りに就こうと目を閉じたのと相前後して、脳裏にそんな言葉が響く。恐らく、自分が人間で会ったときの記憶の欠片だろう。


 堪らずに目を開く。

 人工の眼球に映ったのは、薄暗さに己の色を汚された天井だけ。


 何かの気の所為、そう信じて再び目を閉じる。しかし、瞼の裏にいる顔が黒塗りの人々からの言の葉は止まることを知らず。



『怖い』



 自分の前世を思い出す際に、時折沸き出る感情。

 それがどうしてだか、いつもより強く、大きく、そして重くて。



「怖い……怖いよ」



 我慢できずに出てしまっていた声。

 ハンモックの布を挟んで下にいる彼に聞こえていないことを切望することしか、今の僕にはできなかった。



「……ヴォルフ」

「……おやすみ、ルーくん」



 一瞬、起きていたのかと拍動のリズムが乱れた。が、それは勿論寝言。それを考えるよりも先に察した自分の脳は、我ながら優秀だと思う。


 しかし、彼が寝ているという事実を他の角度から考えてみれば、睡眠中の彼に話しかけても気に留めてくれない上、自分も悩みを吐露できてすっきりするのではないか。



「……あのね、ルーくん」





.

〃→



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 7.6/10 (9 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:コトハ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/classicaloid/  
作成日時:2018年1月30日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。