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-SIAN side-
はっきりしない頭を冷やす為に控え室から出て、テレビ局の廊下を歩く。
時間が経てば少しはマシになるかと思ったが、体調は変わらなかった。
「…あれ、シアン?」
後ろから聞こえた声に振り返ると、そこにいたのはかつての仲間だった。
SA「…ジョンイン」
KI「この前大丈夫だったの?」
SA「この前?…ああ」
彼が言うのは、EXO楽屋挨拶事件のことだろう。
SA「うん、大丈夫。なんかごめんね」
KI「別に良いけど…お前のステージ見てるよ」
SA「何…恥ずかしいんだけど」
KI「ダンス、あの時から上手かったけどもっと上手くなったね」
ジョンインと私は、練習生の中ではダンス要員として切磋琢磨していた。
今やEXOのメインダンサーを務める彼に褒められるのは、素直に嬉しかった。
KI「…何か、大丈夫?」
SA「え?」
KI「めっちゃ顔色悪いよ」
SA「ああ…最近全然寝れてないから」
メンバーには言えなかったことが、自然と彼の前では口から出てきた。
SA「カムバもあるし、歌謡祭の準備もあるし」
KI「ふーん…忙しいんだね」
SA「EXO先輩には及ばないけどね」
KI「何それ、俺達いつの間にそんな距離出来てたの?」
そう言って笑うジョンインを見たら、懐かしくて少し張り詰めていた気が緩んだ。
その瞬間、目の前が突然ぼやけた。
SA「っ…」
KI「うわ、ねえマジで大丈夫なの?」
SA「…ヤバいかも」
咄嗟に支えてくれたジョンインの腕に掴まる。
KI「練習生の時もあったよね。お前が倒れたの」
SA「…その時の話はやめて」
KI「あの時より丸くなったと思ったけど…無理するのは変わってないじゃん」
SA「メンバーも同じくらい大変だから。あの人達の前では弱音吐けない」
KI「…変わったね」
SA「…まあね」
目眩が落ち着くと、ジョンインの腕から離れた。
SA「ごめん、ありがとう。控え室戻るね」
KI「大丈夫?」
SA「うーん…まあ何とかなるよ」
KI「気をつけてよ」
見た目の割に優しいのは変わっていないことに安心して、ジョンインに手を振って別れた。
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作者名:も | 作成日時:2024年1月22日 23時