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72. ページ22

-SIAN side-


はっきりしない頭を冷やす為に控え室から出て、テレビ局の廊下を歩く。

時間が経てば少しはマシになるかと思ったが、体調は変わらなかった。


「…あれ、シアン?」

後ろから聞こえた声に振り返ると、そこにいたのはかつての仲間だった。


SA「…ジョンイン」

KI「この前大丈夫だったの?」

SA「この前?…ああ」

彼が言うのは、EXO楽屋挨拶事件のことだろう。


SA「うん、大丈夫。なんかごめんね」

KI「別に良いけど…お前のステージ見てるよ」

SA「何…恥ずかしいんだけど」

KI「ダンス、あの時から上手かったけどもっと上手くなったね」

ジョンインと私は、練習生の中ではダンス要員として切磋琢磨していた。

今やEXOのメインダンサーを務める彼に褒められるのは、素直に嬉しかった。


KI「…何か、大丈夫?」

SA「え?」

KI「めっちゃ顔色悪いよ」

SA「ああ…最近全然寝れてないから」

メンバーには言えなかったことが、自然と彼の前では口から出てきた。


SA「カムバもあるし、歌謡祭の準備もあるし」

KI「ふーん…忙しいんだね」

SA「EXO先輩には及ばないけどね」

KI「何それ、俺達いつの間にそんな距離出来てたの?」

そう言って笑うジョンインを見たら、懐かしくて少し張り詰めていた気が緩んだ。

その瞬間、目の前が突然ぼやけた。


SA「っ…」

KI「うわ、ねえマジで大丈夫なの?」

SA「…ヤバいかも」

咄嗟に支えてくれたジョンインの腕に掴まる。


KI「練習生の時もあったよね。お前が倒れたの」

SA「…その時の話はやめて」

KI「あの時より丸くなったと思ったけど…無理するのは変わってないじゃん」

SA「メンバーも同じくらい大変だから。あの人達の前では弱音吐けない」

KI「…変わったね」

SA「…まあね」

目眩が落ち着くと、ジョンインの腕から離れた。


SA「ごめん、ありがとう。控え室戻るね」

KI「大丈夫?」

SA「うーん…まあ何とかなるよ」

KI「気をつけてよ」

見た目の割に優しいのは変わっていないことに安心して、ジョンインに手を振って別れた。


.

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作者名: | 作成日時:2024年1月22日 23時

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