三百六夜。 ページ7
Aを傷付けてしまうんじゃないか。
目の前にいるAは、メモリーのAではなく、那木Aなのか。
不安に揺らいでいる目をしたアレンの頭の中は、そんな気持ちが渦巻いているのだろう。
でも、言うんだ。今しか無い。次があるなんて保証、どこにもないんだから。
『アレン、これから私が伝える言葉はまぎれもない那木Aの気持ち。だから、しっかりと聞いてほしい』
「…？分かりました」
いざ覚悟を決めるも、少しだけ緊張する。
立ったままでは目線が少し上になってしまったアレンを見上げて、私は緊張を隠すように拳を握りしめ、息を吸った。
『私は、命が尽きるまで、アレンと一緒に歩き続けるよ。だから…そんなに悲しそうな顔しないで。好きな人の哀しい顔なんて、見たくないから』
アレンの目が大きく見開かれる。
私は精一杯の笑顔でこの言葉を伝えよう。
『私はアレンのことが好き。もし、手紙を書いた時からアレンの心が変わっていないのなら、私の』
突如、アレンの手で口を塞がれた。
下を向いているその顔は、長く伸びた白髪でよくは見えないが、真っ赤に染まっているように見える。
「…待って下さい。手紙って…」
『アレンが逃亡した後、コムイさんが見つけて私にこっそり渡してくれたの。数ヶ月前のことだったから、もしかしたらアレンの心が変わってるかもしれないって思ったけれど、私自身の気持ちを伝えたくて………アレン？』
下を向いたまま動きが止まってしまったアレン。
どうしたの、と改めて声をかけると、小さくなにかを呟く声が返ってきた。
「………か」
『え？』
「僕の気持ちが、そんな数ヶ月の間に変わるわけないじゃないですか」
バッと顔を上げて叫ぶように言ったアレンは、私の顔をじっと見つめたまま言葉を続けた。
「最初は、強くて綺麗な人だと思っていました。でも、任務を一緒にこなし関われば関わるほど、あなたに惹かれている自分に気付いたんです」
何か、引っかかっていたストッパーが外れたようにアレンの口からは今までの想いが次々と溢れ出し、目の前にいるAへと注がれていく。
「Aは皆に優しい。だけど…自分がその中の特別な一人になれたらどんなに幸せかと、何度も考えました」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 521人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あずさ - お忙しいとは思いますが、更新楽しみにしています！！ (2020年1月28日 18時) (
レス) id: dc5172fd12 (このIDを非表示/違反報告)
Rico(プロフ) - こんにちは。アレンくんと夢主ちゃんの今後が楽しみです。お忙しいかもしれませんが、更新頑張ってください！ (2019年8月17日 1時) (レス) id: 3a6a1a4cba (このIDを非表示/違反報告)
歩。(プロフ) - 更新お待ちしてます！ お忙しいとは思いますが楽しみにしています！ (2019年4月23日 4時) (レス) id: f251146aad (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - 楽しみにしてます(｀･ω･´)ゞ (2018年10月20日 19時) (レス) id: 265a916812 (このIDを非表示/違反報告)
パオパオ - めちゃおもしろいです！！！続き楽しみにしてます！！！！ (2018年1月20日 21時) (レス) id: 89165a1c38 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
