三百二夜。 ページ3
私は、彼女が言おうとしていることが分かってしまった。
この子は本気で私の幸せを願い、自分の過ちを繰り返させないようにするつもりだ。
【この夢が覚め、意識が戻ったその時は、アレンさんに気持ちを伝えて下さい】
【…先ほど、貴女の首を絞めていたアレンさんは完全にネア様が身体を乗っ取っていました。マナ様とネア様、私が死んだ後に何があったのか。よくない何かが起こっている気がするのです】
【戦争は繰り返してはいけません。その為にはエクソシストの貴女やアレンさん方の力で平和を取り戻すことが大事です。だから、お願いです。私のことは気にせず、貴女はエクソシストとして生涯を過ごして下さい。…私は、ネア様のお気持ちを知ることもでき未練はありません。
私はこのまま、静かに消えます。だからどうか、貴女はこれからの記憶と意思を強く持って生きて】
凜とした表情と声で私を諭すように言う彼女からは、逆らえないような、それでいて嫌な感じはしない圧力を感じた。
【アレンさんにも気持ちを言葉にする大切さを伝えてください。…そして、もし過ちを繰り返そうとしているのであれば、その時はネア様を止めてあげてほしいのです】
最後の言葉を言う時の彼女は少し雰囲気が変わった。それは、大好きな人を想う優しさからくる願いなのだと、ハッキリ分かった。
『…私の幸せを願ってくれてありがとう。でもね、私の幸せの為に消えようとしているのなら…私は消えるまでの間、あなたに関する過去について分かったことを記憶する。だから、それを共有しよう。それで、何か感じることがあれば、私に教えて?こうして貴女と話すことは可能なんでしょう?』
【不可能ではありません。けれど、消えると意思を固めれば貴女に届く私の声も弱くなっていきます】
『大丈夫!しっかり聞き取るわ。私、これでも聴覚は良い方なの』
ニコッと笑いかければ、彼女も嬉しそうに微笑む。
これからどれくらいの時間がかかるか分からないが、私はたった今から、私自身と協力関係を結んだ。
【貴女に危害が加わりそうな場合は、少しだけ身体を借りても大丈夫でしょうか】
『うん、大丈夫よ。それでさっきも助けられたからね。…自分だから、信頼してる』
【私もです。宿主を変えなくて良かった。頑張ってください、A】
ぎゅっと抱きつかれ、強い風と共に稲穂が揺れる。
思わず瞑った目を開けると、そこは草原ではなく、ベッドの上だった。
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あずさ - お忙しいとは思いますが、更新楽しみにしています!! (2020年1月28日 18時) (レス) id: dc5172fd12 (このIDを非表示/違反報告)
Rico(プロフ) - こんにちは。アレンくんと夢主ちゃんの今後が楽しみです。お忙しいかもしれませんが、更新頑張ってください! (2019年8月17日 1時) (レス) id: 3a6a1a4cba (このIDを非表示/違反報告)
歩。(プロフ) - 更新お待ちしてます! お忙しいとは思いますが楽しみにしています! (2019年4月23日 4時) (レス) id: f251146aad (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - 楽しみにしてます(`・ω・´)ゞ (2018年10月20日 19時) (レス) id: 265a916812 (このIDを非表示/違反報告)
パオパオ - めちゃおもしろいです!!!続き楽しみにしてます!!!! (2018年1月20日 21時) (レス) id: 89165a1c38 (このIDを非表示/違反報告)
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