三百四十一夜。 ページ43
先ほどは触れられたはずのクロスの手を握ろうとしても、私の手は宙を切るばかり。
その光景が面白かったのか、クロスは喉の奥で笑いをもらす。
「A」
バッと顔を上げてクロスを見る。またしても優しげな眼差しに、一気に視界が霞んだ。
「アレンには１人で歩けって言ったんだが、お前には別の言葉を贈る。
２人で歩け。あいつのこと、頼んだぞ。彼女さんよ」
『クロっ…』
私の目から涙がこぼれ落ちるのと同時、クロスの身体はゆっくりと景色の中に消えていった。
一際強く追い風が私の体をすり抜けていく。
数多の麦が揺れるその風景は、目の前にいたクロスが消えてしまったと改めて感じるには十分すぎるほどだった。
『師匠……っ！』
まだ私がクロスのことを師匠と呼んでいた頃。
数ヶ月連絡が取れなくなり、ある日突然帰ってきたクロスに私は同じようなことを言っていた。
幼心で置いていかれるのが怖かったのだ。
帰ってきてくれないかと思った、と言うと、クロスは頭を撫でながら言った。
将来有望な良い女を置いていくわけねえだろ、と。
『大丈夫…クロスはきっと、生きてる。また、会える…！』
目から溢れ出る涙をぐいと拭い、私は大きく息を吸って、深呼吸をする。次に開かれた目には、強い光が宿っていた。
新しい道標が知れただけでも一歩前進だ。
早く、現実世界へと戻って行動に移さないと。
『アレンのところに』
意識を集中させるAを麦畑の中から見つめる少女がひとり。
哀しいような、嬉しいような複雑な表情をした少女……もとい、過去のAは現実世界へと戻りつつあるAを静かに見送った。
「おまえかぶぅ〜？ぶー等の千年公ぉ、つかまえてるのわぁ？」
「ち…っ」
突如襲いかかってきたノアを退ける為、札を使用するリンク。
その術の反動で壁際に飛ばされたネアは悪態をつきながら、自分の隣に人がいることに気付いた。
「…こいつ、死んでんじゃねえのか？」
目を疑うような量の流れ出た血にネアも思わずそんなことを口にする。
「千年公ぉ、はなせぶううう」
「(Aの結界が少し残っている…千年伯爵はまだ離されていない)」
背後から感じるAのイノセンスの力。
イノセンスが生きているということは、Aも死んではいないということだ。
ノアから目を離すわけにはいかないリンク。
しかし、ネアの言葉に少しばかり焦りを感じていた。
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あずさ - お忙しいとは思いますが、更新楽しみにしています！！ (2020年1月28日 18時) (
レス) id: dc5172fd12 (このIDを非表示/違反報告)
Rico(プロフ) - こんにちは。アレンくんと夢主ちゃんの今後が楽しみです。お忙しいかもしれませんが、更新頑張ってください！ (2019年8月17日 1時) (レス) id: 3a6a1a4cba (このIDを非表示/違反報告)
歩。(プロフ) - 更新お待ちしてます！ お忙しいとは思いますが楽しみにしています！ (2019年4月23日 4時) (レス) id: f251146aad (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - 楽しみにしてます(｀･ω･´)ゞ (2018年10月20日 19時) (レス) id: 265a916812 (このIDを非表示/違反報告)
パオパオ - めちゃおもしろいです！！！続き楽しみにしてます！！！！ (2018年1月20日 21時) (レス) id: 89165a1c38 (このIDを非表示/違反報告)
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