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三百十三夜。 ページ14

悪夢にうなされていたようなアレンの表情が徐々に和らいでいき、今は穏やかな寝息を立てている。



安堵の表情を浮かべたAは静かにアレンのベッドから離れ、皆を起こさない為に部屋の外にある洗面所へとタオル片手に向かった。



・ ・ ・



『つめたっ…』



まだまだ寒いこの季節。早朝の、しかも室外に設置してある所の水はやっぱり冷たかった。
でも、この冷たい水こそが、眠気や嫌な事を取り去って清らかにしてくれる気がする。



ポタポタと水滴が頬をつたって顎下から落ちていく。濡れた手で長い前髪を上に持ち上げ、ジッと鏡を見つめた。
眠っている間、鈍い頭痛と熱を持っている感じがした聖痕はまた少し濃くなっていた。
しかも堀が深くなっている。



『…ん−、何なんだろう。悪いことじゃないと良いんだけど…』



意識はしっかりしてる。聖痕が大きくなっているわけでもない。
あの子に聞きたいけれど、まだ上手く話しかけて繋がることが出来ないようで聞けない。



窓の隙間から入ってきた冷気を含んだ風がAの身体を撫でていく。
最後に勢いよく顔に水をかけ、ポンポンとタオルで水分を拭き取りながら廊下を進み始めたAの足は、アレン達の眠る202号室ではなく、外へと向かっていた。



左手にはタオル、右手には錬成された銃が静かに握られている。



『居るんでしょう?出てきてよ』



静かな住宅街にAの透き通った声が響く。数分もしないうちに、その人物は屋根に姿を現し、音もなく目の前に着地した。



「今回は気付きましたね」



『昨日は色々あって鈍くなってただけよ。それより何の用事があってここに留まってるの?』



「そう警戒なさらずとも今は何もしませんよ。その右手の銃も解いてください」



リンクが本当に武器や札を出す動きをしていないのを確認して、私もしぶしぶ発動を解く。
その後すぐに話を始めたのはリンクだった。



「先ほどもお伝えしたように、私は危害を加えることはしません。任務内容を詳しく言うことはまだ出来ませんが、少なくともウォーカーの暗殺ではないです。私の任務遂行の為、微力ながら貴女方に力をお貸しする場面が出てくると思います。その時は私の事を警戒せずお願い致します」



一見聞こえは良いが、『まだ』や『今は』という後からどうなるか分からない言葉がちりばめられている辺りが怖いところだ。

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あずさ - お忙しいとは思いますが、更新楽しみにしています!! (2020年1月28日 18時) (レス) id: dc5172fd12 (このIDを非表示/違反報告)
Rico(プロフ) - こんにちは。アレンくんと夢主ちゃんの今後が楽しみです。お忙しいかもしれませんが、更新頑張ってください! (2019年8月17日 1時) (レス) id: 3a6a1a4cba (このIDを非表示/違反報告)
歩。(プロフ) - 更新お待ちしてます! お忙しいとは思いますが楽しみにしています! (2019年4月23日 4時) (レス) id: f251146aad (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - 楽しみにしてます(`・ω・´)ゞ (2018年10月20日 19時) (レス) id: 265a916812 (このIDを非表示/違反報告)
パオパオ - めちゃおもしろいです!!!続き楽しみにしてます!!!! (2018年1月20日 21時) (レス) id: 89165a1c38 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アストル | 作者ホームページ:http  
作成日時:2017年8月26日 23時

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