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辿り着く前から花の良い香りがやけにするなぁと思っていれば、目の前には足の踏み場もないほどに入り込んできた花たちが扉窓のスペースを占領していた。
見れば、ココの表情が少し明るい。キーフリーの魔法についての伝え方が成功した証だ。
「それで私が呼ばれた理由は…」
「ここにある花たちを君の魔法で……ね!」
あぁ…なるほど。掃除すると同時に、ココに私の魔法を見てもらうってことね。
上手くいけば、魔法に対するイメージをもっと良いものへ変えることができる。
もう隠れて描く必要はない。私はココの目の前で魔円手帳に筆を走らせた。
「そこから動かないようにね?」
「は、はいっ」
陣を閉じた次の瞬間、どこからともなく暖かい風が3人の身体をすり抜けていく。
ぶわっっと地面から押し上げられた花たちはくるくるとココの身体を回り昇り、気付けば頭上で花冠が出来上がっていた。
「ココ、下も見てみて」
「?……わぁっ……!花のドレス…!私花を着てる!」
「それとね、少し花たちに耳を傾けてみて?何か聞こえない?」
はてなマークを浮かべたココが静かに宙を見る。すぐにその瞳はキラキラと輝いた。
「聞こえた…何か聞こえたよAさん!」
何故かひそひそ話をするように耳元で教えてくれるココに、私も小声で教える。
「花たちの言葉だよ。はっきりとは聞こえないかもしれないけど、おめでとうって言ってくれてる。ココを祝福してるみたい」
笑顔でそう伝えれば更にココの表情が明るくなる。そんなことも出来るの!?と言いたげなココにこれは私の特別魔法なんだ。と言えば、すごい…!と瞳の輝きが増した。
「まだ皆には内緒ね」
そしてドレスを形作っていた花たちは部屋の隅にまとまり、静かに降りていく。ココの頭にある花冠だけがそのまま残っていた。
「あれから、こんなに魔法が扱えるようになったの。ココの村で勉強させてもらったおかげだよ」
「わ、私!あの時貰った花冠、ドライフラワーにして部屋に飾ってたんです!今はどうなっちゃったのか、分からないけれど……」
「じゃあ次はこの花冠をドライフラワーにしてくれると嬉しいな。ココが立派な魔法使いになれますように、願いを込めたこの花冠を」
「!…はい!」
・・・・・・・
今回登場した『植物の声が風に乗って聞こえる』という特別魔法は、椿原よる様から頂いた案です。
素敵な魔法案をありがとうございます^^
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アストル(プロフ) - 通行人Mさん» 2回目のコメントありがとうございます!また来てくださって嬉しいです(´˘`*)ほんとに中々ありませんもんね...私も少しずつわかってきた原作の設定を織り交ぜていこうと考えています。オチをどのようにするか迷いますね.... (2020年2月23日 22時) (レス) id: b8413c3aa3 (このIDを非表示/違反報告)
通行人M - 単行本買ってから思い出して来てみましたー。それにしてもΔ帽子の夢作品増えませんね…設定が緻密でまだまだ謎が多いから難しいんですかね…。これからもちょくちょく覗きますね。 (2020年2月23日 19時) (レス) id: cbf5c5978e (このIDを非表示/違反報告)
通行人M - うわわ…ほんと…好みです……ありがとうございます…… (2019年7月31日 20時) (レス) id: ea843ff10e (このIDを非表示/違反報告)
月夜魔法 ルナ - すごくおもそろかったです! (2018年7月15日 10時) (レス) id: 26180cce76 (このIDを非表示/違反報告)
タルト(プロフ) - 読んでいてとても楽しいです。読みやすく最高です!!これからも頑張ってください、応援しています! (2018年5月17日 19時) (レス) id: ac7dbf19f0 (このIDを非表示/違反報告)
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