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学生で未熟だったあの頃とは違う。
今の私にとって風は味方だ。例えそれが強風だったとしても変わらない。
陣を閉じれば、私の周り半径3メートルほどの風が落ち着き、静かな空間が出来る。
おかげで視界は澄み渡り、よく見えるようになった。
「ココたちはどこに……」
背後を見て目に入ったものに一瞬驚く。
そこには強風に巻かれながら巨大なドラゴンが佇んでいた。
それは勢いよく尾を振り上げたかと思うと、塔へ向かって打ちつける。
空気が揺れ、同時に塔に人影があることに気付いた。
「見つけた…!」
階段から身体が投げ出されたのはアガット。飛靴を履いていない彼女を私とは別の方向から来たキーフリーが優しく抱きとめた。
それを確認した私は、飛靴を履いているとはいえバランスを崩しそうなリチェとテティアの元へ向かった。
「わ、わわ!風が強すぎるよー!」
「このままじゃリチェたち、飛ばされる…」
「二人とも!」
「!A先生の声…?」
「えっ?リチェ何か言った!?」
「A先生の声が」
「捕まえたっ」
大切な二人を背後から思いっきり抱きしめる。
不安な顔でこちらを向いた二人の顔は、みるみるうちに安堵したものへと変わった。
「やっぱり、空耳じゃなかった」
「うわぁーん!A先生!」
「怖かったね、もう大丈夫よ」
先程描いた陣を二人にもかざせば、私と同じように風が無くなっていく。
「ありがとうA先生」
「本当に二人が無事でよかった。でもまだ安心は出来ないね」
私の視線の先にはあのドラゴンがいる。
この空間から逃げ出そうとすれば、邪魔をしてくるだろう。
ドラゴンをどうにか巻かなければ脱出はできない。
「二人とも、私の側から離れちゃダメよ」
緊張したような面持ちの二人が頷いたのを確認して、私はキーフリーの元へと急いだ。
「キーフリー先生…!」
「間に合って良かった。アガット、つかまってて」
キーフリーが陣を閉じれば、大口を開けたドラゴンの目の前には巨大な水龍が現れ、そのまま水圧で下へと押し込んでいく。
水に呑まれたはずのドラゴンはダメージが少なかったのか、すぐに立ち上がって僕の方を見た。
「しぶといな…っ」
「アガットー!」
大切な弟子の一人、テティアの声がして僕はそちらに目を向けた。
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アストル(プロフ) - 通行人Mさん» 2回目のコメントありがとうございます!また来てくださって嬉しいです(´˘`*)ほんとに中々ありませんもんね...私も少しずつわかってきた原作の設定を織り交ぜていこうと考えています。オチをどのようにするか迷いますね.... (2020年2月23日 22時) (レス) id: b8413c3aa3 (このIDを非表示/違反報告)
通行人M - 単行本買ってから思い出して来てみましたー。それにしてもΔ帽子の夢作品増えませんね…設定が緻密でまだまだ謎が多いから難しいんですかね…。これからもちょくちょく覗きますね。 (2020年2月23日 19時) (レス) id: cbf5c5978e (このIDを非表示/違反報告)
通行人M - うわわ…ほんと…好みです……ありがとうございます…… (2019年7月31日 20時) (レス) id: ea843ff10e (このIDを非表示/違反報告)
月夜魔法 ルナ - すごくおもそろかったです! (2018年7月15日 10時) (レス) id: 26180cce76 (このIDを非表示/違反報告)
タルト(プロフ) - 読んでいてとても楽しいです。読みやすく最高です!!これからも頑張ってください、応援しています! (2018年5月17日 19時) (レス) id: ac7dbf19f0 (このIDを非表示/違反報告)
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