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「大丈夫ですか」
「あぁ…ありがとう」
私の視線の先には、魔警団のひとりであるルルシィがいる。
容姿端麗、真面目な性格の彼女は『人々に魔法の恩恵を』という務めをしっかり果たしていた。
「…何か用ですか。A」
見られていることに気づいたルルシィは怪訝な顔をしながらも私の隣へやってくる。
数年前、魔警団に誘われていた頃は魔法について語り合うことも多かった。
故に、仲はそこそこ悪くない…はずなのだが。
「そんな顔しないでルルシィ。せっかく綺麗なお顔なのに」
「いつもあなたはそう言う。…噂には聞いていましたが、小さなアトリエに身を置いたというのは本当だったのですね」
「そう。キーフリーとね。毎日頑張ってるよ」
「……あなたの魔法をもっと有効に役立てられる場所は、他に…」
表情こそ無表情だが、言葉には悔しさとも感じられるような言い方が含まれているように感じて、私はルルシィの方を見る。
その時だった。
「今すぐここで治してくれ…!焼け切れた旗だって魔法ですぐに元通りにしていたじゃないか!」
負傷してしまった少年の父親と思われる男性がルルシィの腕を荒々しく掴み、懇願するように言った。
「この子の怪我も治せるだろう?魔法にはその力があるはずだ…!」
「いいえ、ありません」
「そんな…そんなはずは…!」
「手を離しなさい。それとも、彼を運ぶのをやめますか?」
強く男性の手を振り払い、冷たく言うルルシィ。
彼女は私が知り合ったときからそうだった。魔法に対する思いが強すぎて真面目、それが故に物言いが冷酷に感じてしまうことがあるのだ。
あと一言、説明を加えることができればいいのだけど。
少年のこともきっと、ルルシィは全快するまでしっかりとケアをしてくれるはずだ。
「ごめんなさい。彼女は少し口下手なところがあるのです。
彼女が言った通り、私たちは人体への施しはできません。だから、彼の怪我も治せない。でも安心してください。回復までの必要なものこそ魔法で力になれますから」
項垂れる男性の隣にしゃがみ、目線を合わせて説明をすると、ほんの少しだけ表情が和らいだのが分かった。
「…ありがとう。あんたらにも色々と決まりがあるんだな。無理を言ってすまなかった」
「いいえ、不安になる気持ちはわかりますから」
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アストル(プロフ) - 通行人Mさん» 2回目のコメントありがとうございます!また来てくださって嬉しいです(´˘`*)ほんとに中々ありませんもんね...私も少しずつわかってきた原作の設定を織り交ぜていこうと考えています。オチをどのようにするか迷いますね.... (2020年2月23日 22時) (レス) id: b8413c3aa3 (このIDを非表示/違反報告)
通行人M - 単行本買ってから思い出して来てみましたー。それにしてもΔ帽子の夢作品増えませんね…設定が緻密でまだまだ謎が多いから難しいんですかね…。これからもちょくちょく覗きますね。 (2020年2月23日 19時) (レス) id: cbf5c5978e (このIDを非表示/違反報告)
通行人M - うわわ…ほんと…好みです……ありがとうございます…… (2019年7月31日 20時) (レス) id: ea843ff10e (このIDを非表示/違反報告)
月夜魔法 ルナ - すごくおもそろかったです! (2018年7月15日 10時) (レス) id: 26180cce76 (このIDを非表示/違反報告)
タルト(プロフ) - 読んでいてとても楽しいです。読みやすく最高です!!これからも頑張ってください、応援しています! (2018年5月17日 19時) (レス) id: ac7dbf19f0 (このIDを非表示/違反報告)
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