60... ページ11
アライラにそう言われて何か少しだけ嫌な予感がした私たちは、すぐさまアトリエへの帰路についた。
様々なところへ行くにはうってつけの魔法、扉窓。目の前にある扉窓の向こう側には見慣れたアトリエの内部が見えている。
大講堂へ向かった時にかかった時間よりも早くアトリエに着いた私たち。キーフリーは扉窓の上部に手をつきながら、先にどうぞと私を促した。
「ありがとう」
扉窓をくぐり顔を上げると、切羽詰まった表情のテティアが私に駆け寄り、腕を掴んで言った。
「ただいま、テティア。…何かあったの?」
「ココ、ココが…!」
「え……!?」
テティアは、ココが一人でダダ山脈への試験を受けに行ってしまったと今にも泣きそうな声色で話してくれた。
後から入ってきたキーフリーも、驚きのあまり手に持っていた荷物をドサッと落とす。
「今のダダ山脈は一年で一番標高が高いんだ!そんなところへ、この間魔法を知ったココが一人でなんて」
「キーフリー!今すぐ止めに行こう!」
「あぁ、分かってる!ココにもしもの事があったら…!」
キーフリーの方を見れば、既にその手は扉窓を回し、ダダ山脈へ通ずる模様へと動かしていた。
「テティア、ありがとう。ココを心配してくれてたんだよね。後は私たちに任せて」
「でもA先生…中断したら失格じゃ…」
ガコンッと扉窓が繋がる。
険しい表情だったAとキーフリーは、通じた向こう側を見て同時に声を上げた。
「ココ!!」
「あれ?キーフリー先生にA先生…」
「良かった、ココ〜!無事だったんだね!」
扉窓をくぐりアトリエに入ってきたココの身体は泥だらけで、小さな傷が至る所に出来ている。
テティアに抱きしめられた後、ココはアガットの前にあるものを差し出した。
「王の許し取ってきたよ。これで証明になったよね」
きつい目つきでココを見るアガット。私たちが出かけてから、二人の間に何かあったのかもしれない。アライラが言っていた意味をこんなにも早く痛感することになるとは。
無言で背を向けたアガットを見てしゅんとしているココを私は力一杯抱きしめた。
「A先生?」
「ほんっ…とうにココが無事でよかった…!」
「あ…ごめんなさい…。私勝手に…」
「ココ」
キーフリーもしゃがみ込み、ココと目線を合わせた。
54人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アストル(プロフ) - 通行人Mさん» 2回目のコメントありがとうございます!また来てくださって嬉しいです(´˘`*)ほんとに中々ありませんもんね...私も少しずつわかってきた原作の設定を織り交ぜていこうと考えています。オチをどのようにするか迷いますね.... (2020年2月23日 22時) (レス) id: b8413c3aa3 (このIDを非表示/違反報告)
通行人M - 単行本買ってから思い出して来てみましたー。それにしてもΔ帽子の夢作品増えませんね…設定が緻密でまだまだ謎が多いから難しいんですかね…。これからもちょくちょく覗きますね。 (2020年2月23日 19時) (レス) id: cbf5c5978e (このIDを非表示/違反報告)
通行人M - うわわ…ほんと…好みです……ありがとうございます…… (2019年7月31日 20時) (レス) id: ea843ff10e (このIDを非表示/違反報告)
月夜魔法 ルナ - すごくおもそろかったです! (2018年7月15日 10時) (レス) id: 26180cce76 (このIDを非表示/違反報告)
タルト(プロフ) - 読んでいてとても楽しいです。読みやすく最高です!!これからも頑張ってください、応援しています! (2018年5月17日 19時) (レス) id: ac7dbf19f0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ