9... ページ10
「…よっし!終わり!」
全ての線を引き終え、ココは満足気に布を眺めていた。
息を潜めていた私も、思わず気を緩めてドアに寄りかかる。その拍子にドアが開き、キョトンとするココと視線が交わった。
「お姉さん、見てた?」
「あはは…ごめんね覗き見しちゃって。でも、凄かった。本当に魔法みたいに線を引いていくから」
椅子に乗っているココの前まで近づき、目線を合わせて微笑む。
「ココも自分の魔法を見つけたんだね。きっとたくさんのお客様が笑顔になるよ」
「うん!お姉さんの言った通りだった!Aお姉さんも笑ってくれてるから、わたし嬉しい」
自分の頬を包みながら、にへら〜ととろけるような笑みを浮かべたココを私はぎゅっと抱きしめた。
「お手伝いたくさん頑張ったんだってね。偉いよココ。じゃあそんなココに私からプレゼントをあげようかな」
「?なになに!?」
すぐに目をキラキラさせるところは初日から何も変わってないなぁ。
私はこの町で習得した新たな魔法のうち、ココが好きそうなものを選んで魔円手帳に書き込んだ。
ココが喜んでくれる表情が想像できて、思わず顔が綻んでしまう。
「いくよ?」
マントの下で素早く陣を囲うと、開いていた窓から穏やかな風とともに綺麗な花びらたちが踊るように舞い込んできた。
「わ……」
そしてココの頭上で花びらたちが集まり、円を形作っていく。
花冠の形が完成したら、ストンとココの頭に落ちた。
風を自在に操れるようになったおかげで、植物も操れるようになった。この町での成果だ。
「うっわぁぁ!花冠だ…!」
花冠を手に取り、ココは私の予想以上に喜んでくれた。
感謝されたり喜ばれたりすることが大好きな私にとって、これほどやる気の出る反応はない。
「頑張ってるご褒美だよ。これからももっと上手になってこの町1番の仕立て屋さんになってね」
「うん!なる!お手伝い頑張るよ!こんなに綺麗な花冠をありがとうAお姉さん!」
「ふふ、どういたしまして。私も、採寸ありがとう。小さな魔法使いさん」
私はココが採寸してくれた布を、ココは花冠を手にココのお母さんの元へ戻る。
「あらあら、2人とも幸せそうな顔してるわね」
そう言うココのお母さんも、とても嬉しそうな笑みを浮かべていた。
「(本当に、この町を選んでよかった)」
23人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「魔法」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アストル(プロフ) - 椿原よるさん» 植物たちと会話できるということですね!!その時の状況に応じて自分だけに聞こえるようにしたり全員に聞こえるようにしたり出来るのも良いですね…!前回の嬉しいコメントと今回の案、ありがとうございます、椿原よるさん´`*是非使用させて頂きます! (2018年3月3日 7時) (レス) id: debaada4f5 (このIDを非表示/違反報告)
椿原よる(プロフ) - ぜひ、私からも案を出させてほしいと思い、考えてみました。植物たちの声が風に乗って聞こえてくる…というのは如何でしょうか。(その魔法を発動した人にしか聞こえないというのもいいかと) お役に立てたら、嬉しいです。 (2018年3月2日 22時) (レス) id: 84ddbc797d (このIDを非表示/違反報告)
アストル(プロフ) - 月夜さん» あぁ…なんて素晴らしい案なのでしょう…!!話の流れに沿わせるために付け加えたりするかもしれませんが、月夜さんの考える魔法を使える場面を思いついたので楽しみにしていてくださいね!本当に案をありがとうございます! (2018年3月2日 20時) (レス) id: 60a9ea40e3 (このIDを非表示/違反報告)
月夜 - 再度コメント失礼します。魔法の一案として、なのですが…植物と風ということで花弁や葉を使い、つけた人の気配を探ることが出来る能力。 風で飛ばして通信機のようにすることも可能などはいかがでしょう(戦闘っぽくなりますが、迷子防止などに役立ちそうな...) (2018年3月2日 0時) (レス) id: 016749241a (このIDを非表示/違反報告)
月夜(プロフ) - 本当に面白いです!!なかなかこの漫画の夢ないので!更新、頑張ってください!!! (2018年2月25日 16時) (レス) id: 016749241a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ