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ココの申し出により作業場を貸してもらえることになった為、すぐさま底板を運び入れて準備に取りかかる。
魔法をかける瞬間を見たそうなココだったけど、それは掟で禁じられている。なので誰も入っていないよう見張りの役を頼んだ。
「風系統だから、Aの得意分野だな〜」
この場にAが居たら、きっと元よりも良い魔法を施すんだろう。僕の得意分野は残念ながら水だ。でも先生をやってるんだから、全般的な魔法は出来て当然なんだけどね。
途切れたり、消えてしまっている部分へ新しいものを描き加える。さほど時間はかからず、すぐに終わった。
「さて。ココ、終わったよ」
ドアを開ければ、そこには何故か肩で息をしているココがいた。
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羽根馬車が無事に飛び立ち、最終確認がされている煙色の布を待っている間、僕は先ほど目にとまった布を手に取ってみていた。
「魔法使いさん、その布が気になるの?」
「あ、いえ。知り合いが着ているものと似ていたので……綺麗な色ですよね」
「孔雀緑。ココが尊敬しているお姉さんに提案して気に入ってもらえた大切な色でもあるのよ。その知り合いの方も魔法使い?」
「はい」
「結構人気の色なのかしらね」
「お待たせしました…!」
作業場から降りてきたココの手には丁寧に採寸された煙色の布があった。
ありがとう、と目を合わせようとするけれど、その目は少しソワソワしているようで中々合わない。
「そうだ、ココ。この色を憧れのお姉さんにも選んだんだってね」
「はい。お姉さんの髪の色とすごく合ってたんです」
「それにしても、最後に羽根馬車を見に行かなかったねココ。魔法を見て興奮しないなんて珍しい」
「そうなの?」
「っ!こっこれ、お荷物です!!」
勢いよく渡された荷物は見事にみぞおちにヒットし、僕は数秒悶えることになった。詳しく聞きたい事があったんだけど、すぐさま隠れてしまったココは出てくる気配がない。
「……では、そろそろ行きます。ありがとうございました。ココもありがとう。道が交わればまたどこかで」
軽く会釈すると、返ってきたのは店主さんからの笑顔だけで、結局ココは最後まで顔を見せてくれることはなかった。
「……ココと店主さんが言ってたお姉さんって、もしかして……?」
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「わぁ、綺麗な布が買えたね」
日も落ち、たき火を前にして僕達は今日の出来事を互いに話していた。
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アストル(プロフ) - 椿原よるさん» 植物たちと会話できるということですね!!その時の状況に応じて自分だけに聞こえるようにしたり全員に聞こえるようにしたり出来るのも良いですね…!前回の嬉しいコメントと今回の案、ありがとうございます、椿原よるさん´`*是非使用させて頂きます! (2018年3月3日 7時) (レス) id: debaada4f5 (このIDを非表示/違反報告)
椿原よる(プロフ) - ぜひ、私からも案を出させてほしいと思い、考えてみました。植物たちの声が風に乗って聞こえてくる…というのは如何でしょうか。(その魔法を発動した人にしか聞こえないというのもいいかと) お役に立てたら、嬉しいです。 (2018年3月2日 22時) (レス) id: 84ddbc797d (このIDを非表示/違反報告)
アストル(プロフ) - 月夜さん» あぁ…なんて素晴らしい案なのでしょう…!!話の流れに沿わせるために付け加えたりするかもしれませんが、月夜さんの考える魔法を使える場面を思いついたので楽しみにしていてくださいね!本当に案をありがとうございます! (2018年3月2日 20時) (レス) id: 60a9ea40e3 (このIDを非表示/違反報告)
月夜 - 再度コメント失礼します。魔法の一案として、なのですが…植物と風ということで花弁や葉を使い、つけた人の気配を探ることが出来る能力。 風で飛ばして通信機のようにすることも可能などはいかがでしょう(戦闘っぽくなりますが、迷子防止などに役立ちそうな...) (2018年3月2日 0時) (レス) id: 016749241a (このIDを非表示/違反報告)
月夜(プロフ) - 本当に面白いです!!なかなかこの漫画の夢ないので!更新、頑張ってください!!! (2018年2月25日 16時) (レス) id: 016749241a (このIDを非表示/違反報告)
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