【とんがり帽子のアトリエ】風は水に恋をする

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「やぁ、目が覚めたみたいだね。昨晩は君が突然倒れたからびっくりしたよ」



「なっ……なんで、キーフリーが…」



驚きすぎて開いた口が塞がらない。私はキーフリーとテーブルの上に用意されている美味しそうな朝食を交互に数回見た。



そういえば、昨日ノックされて扉を開けてからの記憶がない。ベッドに自力で行った記憶もない…にも関わらず、私は今ベッドの中にいる。



「君にお願いしたいことがあって。夜遅くに申し訳ないなと思いながら、尋ねたんだ。そしたら、扉が開くのと同時に君が倒れるのが見えてね。勝手にお邪魔して悪いけど君をベッドまで運ばせてもらったよ」



「うん…だよね…。ごめんなさい、重労働をさせてしまって…」



きっと、魔法研究でロクに寝ていなかった寝不足と昨日の生き物保護の疲れで意識が飛んでしまったんだな…。ノルノアさんの言う通り、今度から毎日ベッドでぐっすり寝よう。



「重労働…？あぁ、君をお姫様抱っこで運んだこと？」



「く、詳しく言わなくていいですから」



「そうだねぇ…良い筋トレになったよ」



「えっ…」



覚悟はしていたが、面と向かって遠回しに重かったと言われるとだいぶダメージが大きい。



「あはは、嘘嘘。冗談だよ。病気なのかと思って焦ってたから重さなんて考えてなかったよ。でも今の君を見る限り、どこも悪くはなさそうだね」



「本当にごめんなさい。最近徹夜続きだったので疲れが溜まってたんだと思います」



朝食が置かれているテーブルの椅子にキーフリーの上部の魔法服が置いてある。その傍らにあわせ指輪が置いてあった。



「(あわせ指輪で水分を飛ばしてくれたのかな…道理で髪がふわふわなわけだ)」



「徹夜続きならご飯もちゃんと食べてなかったんじゃない？これ少しだけど、どうぞ」



焼き上がったばかりの目玉焼きをベーコンが乗せてあるパンの上にスルリと被せる。椅子に座った私の目の前には、シチューと目玉焼きとベーコンが乗ったパン、そして殻芋だんごが並べられた。



「美味しそう…」



普段では作る気力を無くして我慢していた料理たちが目の前にある。それがどんなに嬉しいことか。目を輝かせるAと向かい合わせにキーフリーも座った。



「食べる前に少し待って」



そうキーフリーに言われたかと思えば、おもむろに伸びてきた手が私の額に触れる。身体をこちらに乗り出したキーフリーとの距離は思ったよりも近い。

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