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それからというもの、私はキーフリーさんと時々話す仲になった。
といっても、すれ違ったら挨拶をしたり、教え合いをしたりするくらいで、すごく仲が良い!とまではいかない。
私としてはもっと仲良くなりたいんだけれど、何しろ私たちは時間があるのにどこか急かされているような感覚があって、勉強に追われる毎日。
試験も決められた期日までにクリアしなければいけない。
そんな状況で、キーフリーさんの邪魔はしたくない。
私は一歩踏み出せずにいたんだ。
・ ・ ・
アトリエでの生活もだいぶ長くなったある日、私たち見習いにある課題が下された。
自身の最も得意とする系統に関連する地域に行き、それについて勉強してくること。
いわゆる宿泊体験のようなものだ。
普通なら複数人で行くはずのこれは、今回の内容として個人で行くことが必須条件。
見習いから一人前になる為に、自立することも兼ねてのことらしい。
「(…キーフリーさんはあれから水についての魔法が上達してたみたいだし、水関連の地域に行くんだろうな)」
仲が良い友達同士で集まらないよう、行く場所は先生たちしか知らない。
私が選んだのは、自然がたくさんののどかな村。
理由は二つ。一つ目は私の得意分野が風だから。二つ目は人を幸せにする魔法として私が考えているものに、自然が必要だから。
「当たり前ですが魔法使いとしての秘密を知られないよう、十分に注意して過ごすこと。それでは、次会う時に皆さんの成長した姿が見られるのを楽しみにしていますよ」
部屋に戻って荷造りをしていると、誰かがドアをノックしたような感じがして、どうぞ、と返事をする。
しかし誰も入ってこない。疑問に思っていると、ポンッと背中を叩かれてAは思わず手に持っていた荷物を落としそうになった。
「びっくりした?」
振り返るとAの手から落ちそうになった荷物を支えながら立っている満面の笑みのキーフリーがいた。
「キ、キーフリーさん…」
「あ、まだその呼び方なんだね。一つしか違わないんだから、呼び捨てで良いよって言ってるのに」
同じくらいだった目線も、今ではすっかり私が見上げる形になってしまった。
私が彼の名前を呼び捨てにできない理由は歳とは別にある。
アトリエでの彼の行動や言動を見ていくうちに惹かれ、好きになってしまったから。
どうしても意識してしまって、呼び捨てにはできないのだ。
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アストル(プロフ) - 椿原よるさん» 植物たちと会話できるということですね!!その時の状況に応じて自分だけに聞こえるようにしたり全員に聞こえるようにしたり出来るのも良いですね…!前回の嬉しいコメントと今回の案、ありがとうございます、椿原よるさん´`*是非使用させて頂きます! (2018年3月3日 7時) (レス) id: debaada4f5 (このIDを非表示/違反報告)
椿原よる(プロフ) - ぜひ、私からも案を出させてほしいと思い、考えてみました。植物たちの声が風に乗って聞こえてくる…というのは如何でしょうか。(その魔法を発動した人にしか聞こえないというのもいいかと) お役に立てたら、嬉しいです。 (2018年3月2日 22時) (レス) id: 84ddbc797d (このIDを非表示/違反報告)
アストル(プロフ) - 月夜さん» あぁ…なんて素晴らしい案なのでしょう…!!話の流れに沿わせるために付け加えたりするかもしれませんが、月夜さんの考える魔法を使える場面を思いついたので楽しみにしていてくださいね!本当に案をありがとうございます! (2018年3月2日 20時) (レス) id: 60a9ea40e3 (このIDを非表示/違反報告)
月夜 - 再度コメント失礼します。魔法の一案として、なのですが…植物と風ということで花弁や葉を使い、つけた人の気配を探ることが出来る能力。 風で飛ばして通信機のようにすることも可能などはいかがでしょう(戦闘っぽくなりますが、迷子防止などに役立ちそうな...) (2018年3月2日 0時) (レス) id: 016749241a (このIDを非表示/違反報告)
月夜(プロフ) - 本当に面白いです!!なかなかこの漫画の夢ないので!更新、頑張ってください!!! (2018年2月25日 16時) (レス) id: 016749241a (このIDを非表示/違反報告)
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