【とんがり帽子のアトリエ】風は水に恋をする

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「どこにいったの…！」



髪の毛は乱れ、服も濡れ始めた。魔法の威力が弱まってきている証拠だ。



「！あれは…」



見慣れたバッグ。駆け寄って手に取ると、私が施した植物の刺繍が入っていた。



「間違いない…キーフリーさんのだ」



ということは近くにいるはず。



だが、探していないとなるとこの付近には流れのはやい川しかない。



「…まさか」



キーフリーさんは川の中に…？



バッグを掴んでいた手は黒く汚れた。よく見ればバッグの一部にインクが漏れ出しポタポタと地面に落ちている。



脳裏には初めて話すきっかけとなった雨宿りの記憶が蘇った。
こんな川の中であの状況が起これば…



最悪な未来を振り払うように、私は川岸に着くやいなや光の魔法で一帯を照らした。



キーフリーさんのあの綺麗な髪はきっとこのくすんだ川の中でキラキラと反射するはず…！



「どこ…キーフリーさん…！」



目の前の一帯が終われば、次の範囲へ。移動しては光を出し探す、この繰り返しを三回ほど続けた時だった。



川の中の大きな岩陰にキラリと何かが光った。



「！キーフリー！！」



もたれかかるようにしてその場に留まっているキーフリーの身体。
岩に引っかかっているようだった。



「どうか、そこから動きませんように！」



急いで手帳に陣を描く。水が邪魔なら操ってしまえば良い！



瞬間、キーフリーの周りに流れていた水が動きを変え、竜のようにうねり始める。
大きく空に上がったと思えば、その水の柱はそのまま川に戻り、キーフリーがいる岩付近を下から押し上げるようにしてこちらに向かってきた。



「よし…よし！」



キーフリーの身体は水に包まれてこちらにやってくる。
地面に激しく打ち付けないようにとキーフリーが着地するであろう場所に小さなつむじ風を起こした。



思惑通り、ゆっくりとキーフリーの身体は地面に落ちつく。
キーフリーを助けることが出来た、その安心感からAは運んできてくれた水のことをすっかり忘れていた。



「あ…」



二人を覆うようにして大きな影が落ちてくる。
キーフリーをここまで運んでくれた大量の水が容赦なくそのまま降ってきた。

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