二ヶ月の蜃気楼

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「 阿部、ワンテンポ遅い！ 」


「 康二、力入れすぎ！ 」


「 ふっか、そこもうちょっとためて！」






今日は一段と照が燃えている。




今日は新曲の振り入れの日。


2週間ぶりにメンバーと会える。






今回の曲は、デビュー曲以上にダンスが激しくて、難易度も高い。






9時から昼まで練習して、みんなでご飯を食べる。









「 翔太、今度のドラマって撮影いつからなの？ 」


「 んっとね、再来週の月曜だったはず、番宣で阿部ちゃんと多分クイズするはずだけど 」


「 うそ？！翔太と？！ 」









「 康二くんがこの間言ってたあの曲、めっちゃ良かった！」


「 え！ラウール聞いてくれたん！あれええやろ！ 」









「 舘さん、それ手作り？ 」


「 うん、ちょっと早く起きて作ったよ、目黒のそれ、何味？ 」


「 鮭っす 」


「 えー！おれも鮭〜 」


「 佐久間すぐ立ち上がるな 」(笑






ご飯の時でも、常に一緒。



みんな個々の仕事で集まれない日があるからこそ、こういう日がすごく大切に思える。






でも今日は、照の調子がいつもと違う。









昼飯を食べ終えて、午後からの練習。



今日は一日中やりきった。




時計を見ると午後8時。



明日は全員別の仕事があるから早々と帰宅の準備をしていた。







そこで俺は今日ずっと気になっていた照に声をかけた。







「 照？なんか今日、体調悪かった？ 」


「 …いや、そういうんじゃないから、大丈夫 」


「 ならいいけど、なんかあったら言えよ、抱え込むのは違うだろ 」


「 わかってるから、それは 」


「 やっぱりお前、なんかあったんだろ 」


「 だからなんもねえって言ってんじゃん 」


「 なんだよそれ 」


「 ふっかには関係ねえから 」


「 お前いつまで1人で抱え込んでんだよ、メンバーのことも頼れよ！ 」


「 お前に何がわかんだよ！ 」


「 わかるわけねえだろ！お前がなんも話さねえから！」








つい、大声になってしまう。



照と言い合いをしたい訳じゃないのに。



ああ、ラウールが心配そうな目で見てる。



康二なんて、涙目だ。









メンバーにこんな顔をさせたい訳じゃないのに。







「 もう、いい 」






照はそう言って、一人で帰っていった。







こんな言い合いをしたのも、何時ぶりだろうか。



あの時はどうやって仲直りしたんだっけ。







「 …わかんねえよ 」








頭をかいて、そう呟いた。





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