限界オタクの恋愛事情 (ページ19)

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「ねえ、いよいよだよ」

開場して、いよいよ席に向かう。

まさか最前列だとは誰も思わないじゃん。

「緊張してきた」

「大丈夫だって、やべ、俺も緊張してきた」

「大丈夫じゃないじゃん！」

そう言いながら、だんだん前へと進む。

私たちの前を歩いていた人が、右に曲がって列に入って行ったり、

ここじゃなかった、って来た道を引き返して行ったり。

最前列なのは分かってたけどどの辺かは分からない。

始まっていないのに、もう変な感じ。

「うわ、目の前ステージだよ… 」

「やばい、どうしよう、」

さっくんはさっきから「やばい」しか言ってない。

「ここだ」

そう言って私たちが着いた席は、

「「最前ドセンじゃん… 」」

これ以上の奇跡があっていいのかと疑うほどの神席だった。

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会場が暗転し、私達は2人とも上限までのリングライトとペンライトを用意する。

流石一年前からの価値観の合うファンだ、と勝手に納得していると、Overtureが流れ始めた。

大きいモニターには、メンバー一人一人の名前とイラストがかっこよく映し出されて、紹介されていく。

『さあみんな、準備はいい？！』

リーダーで黄色のニアちゃんの声。ショートボブが印象的なハツラツとした女の子。

彼女の声に、会場は

「「おおー！！！」」

とハイテンション。

『置いてかれないようにね』

次は紫色のシズキちゃん。物静かでミステリアス、いつもお人形を抱いているのが特徴的。

彼女には女の子のファンが多い。

『目を離したら許さないから！』

次はプライドが高く完璧主義、だけど話が進むにつれて色んなギャップが見えてファンの心を掴んだ、さっくんの推し、ミレイちゃん。

「ミレイちゃん！！」

「ミレイちゃーん！！」

まだ姿は見えていないし、私に至ってはまだミコトちゃんの声が聞けていないのに、

二人とも最初からテンションがマックスだった。

『今日は楽しんでくださいね？』

これはつい一週間前、私達本誌勢の心をズタズタにした緑色のヨウコちゃん。敬語キャラで眼鏡っ子。

内通者だったことが判明し、原作ではグループの活動を休止、さらに行方不明、とかなりのお騒がせ人物だが嫌いになれない。

だって、大事なミコトちゃんのメンバーだから…。

「ヨウコちゃーん…！」

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