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「 俺、留年してんの 」
海沿いに走っている頃、大我は突然そう言った。
「 へえ 」
少し驚いたけど、だからといって何が起こる訳でもない。
素直な反応がそのまま口から出た。
「 病気で、入院してたら出席日数足りなくなった 」
「 肺が弱くて、でも、もう完治した 」
後ろにいる大我の顔はみえないけど、多分海を眺めてるんだろう。
「 今、元気なら、良かった 」
私は、大我が幸せならそれでいい。
「 今日さ、退学届出してきた 」
大我はそのままそう言った。
道の途中のカーブミラーには、案の定、海を眺める大我の姿が一瞬写った。
「 そっか 」
私に、大我を止める権利も、何も無い。
「 最後に、Aと学生生活を過ごしたかったからさ、今日は行った 」
こんな、大我にとってはなんの意味もないであろう言葉に、
一人で、自惚れる。
「 大我は、幸せ? 」
そう聞いたら、
「 幸せ、でいいのかな 」
なにか、難しい答えが返ってきた。
「 いいよ、幸せで 」
「 じゃあ、幸せ 」
「 うん 」
そう言うと、大我はまた歌を歌いだした。
その歌が、心地よくて、幸せで。
帰路に着くまでその歌は続いた。
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作者名:a. | 作成日時:2020年10月17日 22時