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「 Aファイト〜 」
「 苦しい、しぬ、 」
「 さっきから髪の毛が顔に当たるんだけど 」
「 知らないよ、じゃあ掴んどいて 」
この倉庫を出発してから約15分。
もう既に帰ってきたのは、大我が「やっぱ人多いから帰ろう」と言ったから。
その代わりにスーパーで安く売られていた花火を買って、帰りのきつい坂道を私が漕いだ。
私の毛をまとめて掴む大我は呑気に鼻歌を歌ってる。
それがまた上手いからムカつく。
やっと、長い坂道が終わって、倉庫へと到着した。
「 おつかれ、花火しよ 」
多分大我は本当に「おつかれ」なんて思ってないだろう。
この人の頭の中は、「どの花火をしようか」という悩みでいっぱいだと思う。
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「 あと何があんの？ 」
「 あと線香花火しかないよ 」
最後に取っておいたのは線香花火。
よく考えてみれば、手持ちの花火をするのも、何もかも初めてだった。
隣にいるのは、初めての友達。
「 大我 」
風に靡かれた綺麗な髪の毛。
花火を楽しそうにする大我。
「 ん？ 」
わたし、何を言おうとしてたんだっけ。
考えてたことも吹っ飛ぶくらい、変な気持ちになった。
なにか、変な胸のざわめきが起こった。
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花火も終えて、片付け終わった私達はいつもの定位置に座っていた。
大我は赤色の長いソファ。私は茶色の高い椅子。
大我がまた、ギターを持って鼻歌とともに弾き出す。
それにつられるように、私もまたテキストを開いた。
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「 Aって左利きなんだ 」
「 うん、なんでいきなり？ 」
「 いや、ペン持ってるのが見えたから 」
お互いのことは、ふとした行動の中で知っていくことが多かった。
サラダを食べた時、私のトマトを勝手に盗んだことで、大我はトマトが好きだと知ったし、
ご飯食べたらすぐ眠くなるような意外な一面も日常の中で知った。
こんな、何気ないことに気づく、
今が、一番幸せ。
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作者名：a.
| 作成日時：2020年10月17日 22時
