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その匂いは静かに空気に溶け込んでいった。
私はインクの香りを堪能しながら、ちょうどテストの丸付けが終わったらしいフローレンス先生にここぞとばかりに声をかけた。
「丸付けご苦労。フローレンス先生、榛名先生はどこに?」
「先生なら屋上に。望遠鏡の確認だそうです」
「どうも有難う」
私が礼を言った時と同じくらいのタイミングに、職員室の扉をノックする音が聞こえた。
一部の先生が、扉の発した音に驚き、目をやる。
目線が集中していく扉ががらりと開き、「フローレンス先生に用があります」と、紫の髪の女子生徒が顔をのぞかせた。
「プルメリアさん、宿題ね。支倉先生、ちょっとすみません」
フローレンス先生が、プルメリアと呼ばれた女子生徒の元へ向かっていった。
榛名先生の居場所も判ったことだし、私もお暇するとしよう。
私はせかせかと働く先生らを心の中で労い、自分の机の引き出しに鍵を放り込んでから職員室を出た。
☆★☆★
屋上に向かうと、フローレンス先生の言葉通り榛名先生がいた。
榛名先生は天文部のものである巨大天体望遠鏡のレンズに目を当て、なにやら星を見ていた。
「先生」
と、短く言葉を発すると「あ、初音先生」。
「榛名先生、だいぶ熱中してたな」
「ええ、珍しい星が見れまして」
「そうか」
嬉々とする榛名先生。結っている三つ編みが嬉しそうにはねた。髪の先まで使って嬉しさを放出していく。私はそんな先生に頷いた。
「これをご覧ください」
と、星についていろいろと教えてくれた。鶯崎にも教えてあげたら喜ぶだろうか。
「先生、職業体験先は?」
「私は恐羅神社へ。神社は得意分野ですから!」
「さすが先生。私は39マートへ」
「そうだったんですね!初音先生の事だから、てっきり図書館かと」
意外そうに黒目がちの眸を丸く先生。その双眸が見開かれる。
「とにかく、職業体験も頑張るとしようか」
「ですね」
榛名先生がにっこり微笑んだ。夕陽が彼女を照らした。
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ユリイ(プロフ) - パスワードは前回同様です! (2020年5月12日 16時) (レス) id: 2b687b1169 (このIDを非表示/違反報告)
ユリイ(プロフ) - 更新しました。お話がいっぱいになりましたので、続編へ移行します。 (2020年5月12日 16時) (レス) id: 2b687b1169 (このIDを非表示/違反報告)
ユリイ(プロフ) - 更新します! (2020年5月12日 15時) (レス) id: 2b687b1169 (このIDを非表示/違反報告)
露留(プロフ) - 更新しました (2020年5月9日 20時) (レス) id: 412cf2cbe1 (このIDを非表示/違反報告)
露留(プロフ) - 更新します (2020年5月9日 20時) (レス) id: 412cf2cbe1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スカイハイ転生学園一同 x他3人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/sakyomatsu1/
作成日時:2020年4月28日 20時