世界に通ずる看板【夜霞 樹・プルメリア】 ページ43
探偵部部室。部室の中が少し涼しいのは、気のせいだろうか。
太陽は億劫な授業中の時の位置よりかなり動いて、優しい陽光のようなものではなく、ギラギラとしていて暑くて病気にでもなりそうな陽光を発していた。
陽光が太陽から降り注ぎ、朝礼台と生徒会・転生部たちがいる校庭に突き刺さる。
その光は強く、太く、とても四月に振って来るような光ではなかった。
「はいどうぞ。これこの間届いた新しい茶葉なんだけどどうかな?」
ロビンフッドの転生者が私が座っている机の上にコトリ、と紅茶のカップを置いた。ソーサーも一緒に。
カップは素人でも判るような舶来ものの逸品だ。
まあ、こいつはうちの父さんから借りて来たものだがな。
紅茶のカップからはアッサムの芳醇な香りが微かに立ちのぼっていた。
新しい茶葉か。少し興味がある。
「どうも有難う」
私は樹に礼を言い、軽く会釈をしてから右手でカップの持ち手を握り、左手でソーサーを掴んだ。
喉を冷たいアッサムが流れ込んでいった。
濃厚なコクがありつつもすっきりとした味。
時折鼻腔を芳醇な香り。
そしてこの味と香りを引き出す、プロ級の樹の腕。
これじゃ当分、他のアッサムがうまく感じられないかもな。本気でそう思った。
そう思っている間に味と香りに引き込まれ、気づけば最後の一滴まで紅茶を飲み干していた。
樹が紅茶を飲む私を、美味しそうに飲んでくれてよかったという感情と、少しの心配が混じった複雑な顔で見つめている。
そうだ、この紅茶の評価をしておかなければ。
紅茶に引き込まれてしまって、すっかり忘れてしまっていた。
コトリとカップを置くと、私は今もなお複雑な顔をしている樹の目をしっかりと見て行った。
「うまい。また淹れてくれ」
「なら良かったよ」
樹が嬉しそうに口元を綻ばせた。その笑顔を見て、こちらも自然と笑顔が浮かぶ。
そうだ、と樹が言った。
「どうした?」
「イースターのタマゴの集計、そろそろ出るんじゃないか?」
「そうか。あと少しで、六時間目が終わるからか」
そう言いながら部室で時を刻む時計に目をやると、それはもう少しで六時間目が終わるということを告げていた。
「やっぱ気になるし。タマゴ探しながら、向かうとするか」
「ああ」
パチリ、と探偵部部室の電気が消え、しばしの静寂と闇が訪れた。
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ユリイ(プロフ) - パスワードは前回同様です! (2020年5月12日 16時) (レス) id: 2b687b1169 (このIDを非表示/違反報告)
ユリイ(プロフ) - 更新しました。お話がいっぱいになりましたので、続編へ移行します。 (2020年5月12日 16時) (レス) id: 2b687b1169 (このIDを非表示/違反報告)
ユリイ(プロフ) - 更新します! (2020年5月12日 15時) (レス) id: 2b687b1169 (このIDを非表示/違反報告)
露留(プロフ) - 更新しました (2020年5月9日 20時) (レス) id: 412cf2cbe1 (このIDを非表示/違反報告)
露留(プロフ) - 更新します (2020年5月9日 20時) (レス) id: 412cf2cbe1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スカイハイ転生学園一同 x他3人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/novel/sakyomatsu1/
作成日時:2020年4月28日 20時