ガヤガヤ ページ1
ガヤガヤと人の声が途切れることなく響くスタジオ。
機材を運ぶ人がいれば、カメラ割りの最終確認をしている人もいる。
人口密度の高すぎるこの空間で、私、AAは忙しなく動いていた。
今日は毎週金曜のクルキタTVの日。
ネット配信の番組で、最近話題になる人や、なるかもしれない人をゲストに1時間のトークをする番組。
スタッフである私は動きやすいスニーカーに、グレーのパーカー、そしてジーンズ。
オシャレとは掛け離れた格好ではあるが、ファンデーション程度はしてるので、忙しいの一言で片付けて欲しい。
「Aさん、今日の司会のことなんだけど…冒頭部分のセリフ3行ほど増やしてもいいかな？？」
『あ、大丈夫ですよ！』
「ありがとう…！助かるよー！」
いや、全然大丈夫じゃない。
後で司会の人に伝えて、セリフの確認をしなきゃ行けない。
仕事が増えてしまった…。
たしかに私が断ればいいのだが、心のどこかで私が謝る方が楽だと思っているのかもしれない。
「えぇ！？」
私がバレない程度に肩を落としていると、ハリがあって目立つ大きな声が響いた。
視線を動かすと、そこにはワナワナと震えているプロデューサーとガクガク震えている新人さん。
「お前、司会の子インフルエンザで今日来れないって！？どういうことだよ。あと1時間もねぇぞ！？」
その声に皆がざわめく。
時計を確認すると、確かに40分弱しか時間が余ってない。
今から代役を探すのは少々難があると思う。
その時、額に青筋を浮かべているプロデューサーと目が合った。
あ、やべぇ。
革靴が近づいてくる音。
近くまで来たプロデューサーの体格は元ラグビー部だからなのか、熊のように大きかった。
「A、お前に司会をやってもらう」
『わ、私ですか！？』
「おう。流れもそれなりに分かってるだろ？よく見ると顔も悪くないって。ほら、スタイリスト。連れてって」
よく見ると悪くないってなんだ。
とにかく半強制。いや、ほぼ強制である。
結局囚われた宇宙人のような格好で、私はスタジオを出ていった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 8人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ベレー帽 | 作成日時：2018年10月22日 23時
