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行かないで離れないで(1)【双黒】 ページ38

「私と一緒に探偵社に入らないかい?」


太宰さんが私の腕をパシッと取り、重心が傾いた私は抱き寄せられる形になる。
太宰さんの優しい匂いが鼻孔をくすぐり、薄い胸板からは確かな鼓動を感じる。
彼の右目の包帯はいつの間にか無くなっている。包帯を外しても結局彼は端整な顔である。
淡い月の光が私たちを映し出す。


織田作さんの死をきっかけに太宰さんはポートマフィアを抜けることを決意した。
それと共に私も一緒に探偵社入らないか、との誘いを受けた。


「……行かないでください」


私は双黒の補佐役だった。
太宰さんと中也先輩のことが大好きだった。
…だから太宰さんが探偵社に入ることも、中也先輩が太宰さんのいないポートマフィアにいることも嫌だった。


「行かないことは私にはできない、織田作と約束したんだ」


「分かってます…でも…嫌です」


「何が嫌なのかい?」


「……」


言葉に詰まった。太宰さんを選ぶと中也先輩といられなくなる、その逆も然り。
それがどうしようもなく嫌だった。
なのに、どうして上手く言えないのだろう。


「A、行くな」


奥の闇から声がしたかと思うとコツコツと靴音を立てて中也先輩が現れる。
グッと太宰さんと私の間に割ってはいり、私の肩を荒っぽく抱き寄せ太宰さんと距離を取る。

太宰さんはやれやれというようにため息をついた。

「行きたくありません、でも行きたいです」


「行ったら俺は手前を殺す」


「じゃあ先輩も一緒に3人で探偵社に……」


「馬鹿か、手前ェ」


掠れた声で先輩は言った。いつものツッコミの覇気がない。


「Aちゃん」

満月を背景に太宰さんは目を細めて笑った。…ひどく色っぽい。



「君はどちらも選ばない。否、選べない」


私抱きしめる中也先輩の腕に力がこもった。


「A、どこにも行くな」


駄々を捏ねるように呟く中也先輩の温もりを感じながらこのまま消えてしまいたいと思った。



ーーーー

これからだいぶ続きます

行かないで離れないで(2)【双黒】→←貴女と共に永遠を【織田作之助】



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(=^・^=) - 今、芥川役で『龍ちゃん大好き』になってるトコなんですよ…。 (2020年12月3日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
ヴィオラ - しぐれったさん» ???「24歳!学生です!!」 (2020年5月12日 14時) (レス) id: 623f3ee5b5 (このIDを非表示/違反報告)
しぐれった(プロフ) - みうさん» そそそそそそそそんな意図なかったですよ。べ、別に書いてる時に先輩感出たけど誰も気づかないかって投稿とかしたりしてませんよ……わ、私は淑女ですから。 感想ありがとうございます!緩い気持ちで読んでってください (2019年7月27日 0時) (レス) id: cac4953071 (このIDを非表示/違反報告)
みう - 野獣と化したってwwww野獣先輩じゃんww      このお話とても面白いです!!! (2019年7月26日 20時) (レス) id: 40cf893d3e (このIDを非表示/違反報告)
しぐれった(プロフ) - 実胡斗さん» リクエストありがとうございます。そしてお返事遅れてしまいすみません。リクエストですが、続編の方に書かせて頂きましたm(_ _)m (2019年7月7日 14時) (レス) id: c7820e4193 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しぐれった | 作成日時:2016年6月7日 0時

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