本当は、 【織田作之助】【文スト】

初デヱトの日。 ページ11

前とは違う、正真正銘、初デヱトです。
私、本当に本当に嬉しくって、デヱト前日は朝から服を選んで、お化粧はどうするかと悩んで、気付けば夕方でした。勿論全然眠れませんでした。

「すみません、待ちましたか？」

待ち合わせ場所の時計台の下には、大好きな作之助さんの後ろ姿。

待ち合わせ時間に余裕をもって来たのに早いなあ、もしかして作之助さんも楽しみにしてくれてたのかな、なんて思いながら声をかけました。

「大丈夫だ、少ししか待っていない。
　……それにしても、服、似合ってるぞ」

ゆるりと弧を描く作之助さんの唇。バクンバクンと音をたてはじめる私の心臓。

「さ、作之助さんも！すごくかっこいいです！」

内心嬉しさ半分照れ半分で半ば叫ぶようにそう云うと、作之助さんは目を見開きました。

「その反応は予想外だ……」

口元に手を添え、視線を宙に泳がす作之助さんの耳元は、赤く染まっていました。

私にとっては、作之助さんのその反応が予想外ですよ。

「じゃあ、行きましょうか」

丁度青に変わった信号を渡ろうとした時、

「待てっ！！」

切羽詰まった声と共に、後ろに引っ張られました。どうかしましたか、と後ろを振り向こうとした瞬間、目の前を物凄い勢いで車が走っていきました。

あのまま渡っていれば轢かれたことは明白です。先程とは違う意味で早鐘を打つ、私の心臓。

「ありがとうございます、作之助さん」

「A、怪我はないか」

「あ、はい…大丈夫です」

今思えば、作之助さんの異能の効果だったんですね。
あの時は、何で車が走っていくのが分かったのか不思議で堪りませんでしたけど。


…初デヱトのこと忘れる人いませんよね。

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