【ヒロアカ】フェニー【轟焦凍】 (ページ48)

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「あんただよな？緑谷出久って」

　視界の隅っこで心操くんが、デクくんに話しかける姿を見つける。慌てて口を開こうとしたデクくんの口を塞ごうとしたら、先にもふっとしたものが遮った。尾白くんの尻尾だ。

「デクくん！」
「奴に、答えるな」
「！？」

　危ない危ない。危うくデクくんまでもが棄権にされるところだった。
　レクリエーションには参加しないため、控え室に場所を移して尾白くんと二人でデクくんに心操くんの”個性”について教えた。

「操る”個性”か、強過ぎない？」
「ああ、でも多分初見殺しさ。俺、問いかけに答えた直後から記憶がほぼ抜けてた。そういうギミックなんだと思う」
「うっかり答えたら即負けだね……」
「答えちゃだめだよ、デクくん」

　ゾッと青ざめるデクくんの緊張をほぐそうと笑いかける。

「いやでも万能ってわけでもなさそう。記憶……”終盤ギリギリまでほぼ”って言ったよな？心操が鉄哲のハチマキを奪って走り抜けた時、鉄哲チームの騎馬とぶつかったみたいで……したら覚めた。そっからの記憶はハッキリしてる」
「私も同じ。多分尾白くんがその拍子に私にぶつかったのかも」
「衝撃によって解ける……？」
「の可能性が高い。というか」
「二人がそうなったなら、きっとそう」

　可能性どころか確信していると私は言い切った。でも問題がある。

「つっても、どの程度の衝撃ならとかもわからないし、そもそも一対一でそんな外的要因は期待できないけどさ。まァ俺らから出る情報はこんなもん。な？紅羽さん」
「うん、これくらいだね」
「ありがとう！ものすごいよ！」

　尾白くんはパイプ椅子から立ち上がった。少しはデクくんの役に立てたみたいだ。

「すごい勝手なこと言うけどさ。俺の分も頑張ってくれな」

　先程見つめていた拳を、尾白くんはデクくんの肩につけた。そして私の方にも向いた。

「紅羽さんも。さっきは励ましありがとう」
「ううん、そんなことないよ」
「紅羽さんには励まされてばかりだ」

　そう言って、尾白くんは笑顔を見せた。少しは彼を救えていると思ってもいいのだろうか。私はそっと微笑み返す。

「ところでいつまでそんな格好でいるの？」

　尾白くんは半ば呆れた表情で問う。そんな格好とは、勿論チアガールコスチュームのことである。私はボンボンを振り回して見せた。