【ヒロアカ】フェニー【轟焦凍】 (ページ36)

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「どこ行くの？ Aちゃん」
「相澤先生のところ！ランチ、約束したの！」
「あの相澤先生と？」
「あの相澤先生と」

　梅雨ちゃんだけではなくそばにいた三奈ちゃんも驚くものだから、私は笑ってしまう。
　必要以上に生徒と馴れ合わないタイプの先生。相澤先生の口癖「非合理的」だからだろう。

「押し切った！」
「流石ね、Aちゃん」
「うん、行ってくる！」
「頑張ってー」
「頑張ってね」

　エールをもらって、早歩きで食堂に向かう。時間は有限。
　結局、相澤先生はランチを選ばなかったので、食べやすそうなそばに決めた。並んでいると、ふと後ろが気になって振り返る。

「うわ！？轟くんだ！？」
「そんなに驚くことか？」

　真後ろにいたのは轟くんだったから、思わず声を上げてしまう。轟くんは、冷静だった。

「ごめん、いるとは思わなくて。轟くんもそば？」
「ああ」
「美味しいよね。最近暑いし、ざるそばもいいよね」

　並んでいる間、話をしようと思ったけれど、轟くんから返事がない。せめて相槌を打ってほしい。

「しっかし、一昨日は大変だったね」
「ああ、そうだな」
「轟くんは土砂ゾーンで、鬼強かったって透ちゃんから聞いたよ？」
「チンピラ程度の敵だったからな。おまえだって、あの程度平気だったんだろう？」

　話題は敵連合襲撃のこと。散らされた時、轟くんは土砂ゾーンに送られて一瞬にして敵を凍らせたらしい。透明人間の透ちゃんに聞いた。
　一戦交えたことがあるからなのか、轟くんはそんなことを言う。褒められているのだと思うと胸の中がくすぐったくなる。
　けれども、上鳴くんが人質になった件を思い出すと素直に喜べなかった。

「うん、でも、伏兵がいるって気付かなくてね」
「上鳴の件か」
「自分の強さが通用しただなんておごっちゃだめだと思ったよ。もっと強くならなくちゃ」
「……」

　胸の前に拳を作って握り締める。まだまだ強くならなくちゃいけない。
　あの平和の象徴のようなヒーローになる為。
「大丈夫」の一言で安堵を与えられるヒーローになる為。

　気付けば、轟くんは私をじっと見ていた。何かと見つめ返していれば。

「オールマイトが襲われた際、一人飛び出したと聞いたぞ。その関係じゃないか？」

　飯田くんの声が聞こえてきて、二人してそっちに目を向ける。