検索窓
今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:63,190 hit

35.花金 ページ35

13日の金曜日。


不吉な日だと世間では騒がれても
私にとっちゃあ、至福の夜が待っている。


水曜、木曜、とたったの二日会えなかっただけで
会いたい気持ちと比例して
楽しみな気持ちは膨らみすぎて割れちゃいそうな程だ。



しかも、

「早めに上がったから会社まで迎えに行くわ」

と連絡が入って、有頂天な私。



彼氏かよ!って自惚れちゃって
止まらないニヤニヤを必死で隠すのに必死だった。


出来るだけ早く帰れるように
集中しなきゃいけないのに、そういう日に限って、そうは行かない。

残業とまでは行かないけど
仕事が積み重ねに任されてしまって

気付けば二宮さんに告げた時間が来ていた。



「長引きそうです。寒いでしょうし、先に行ってて下さい、ごめんなさい。」


と、渋々連絡を入れた。



せっかく、迎えに来てくれたのに。


仕事終わりの二宮さんからの「おつかれさま」
が欲しかったのに…



ハァ。

一刻も早く会うために頑張ろう。


そう思って
自分の頰をパチン、と両手で叩いて
気合いを入れ直す。




恋の力は、本当に凄いと思う。

人生で一番の集中力だった気がする。
30分強で仕上げあげた自分を褒め称えたい。

颯爽とオフィスを出ると





「お疲れさん。」



気怠そうに二宮さんがフェンスに寄り掛かって
両手をポッケに突っ込みながら

いつものように薄く微笑みながら立っていた。



なんで…?


「待っててくれたんですね。」
「さみぃ。」
「ごめんなさい。」
「ンフフ、いーよ。」




二宮さんは寒そうに猫背の背中を更に丸めていて
その後ろ姿に

キュン、と心を擽られる。


二宮さんの「おつかれさん。」を
頂けただけで、もう今日は十分に幸せだった。




「ね、今日違うとこ行ってみる?」


バーへ向かう歩みを止めて
二宮さんは私の方に振り返る。


「たまにはいいですね。」


デートみたいで、ワクワクした。



二宮さんのチョイスで、と頼むと
「後での文句は受付けないよ?」って
悪戯な表情を見せる二宮さん。


二宮さんに連れられるお店なら
何処でも良かった。


花金だから、街は人で溢れかえっていて
すれ違う人はみんな、楽しそうに見えてくる。

でもね

私が一番楽しいんだ!って言い切れるよ。



私、今、誰より幸せな自信がある。



「楽しそうだな。」


ルンルンな気持ちを隠しきれずに
二宮さんにククク、と笑われてしまった。

36.プラマイゼロ→←34.恋い焦がれる



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.8/10 (46 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
284人がお気に入り
設定タグ:二宮和也 , , 恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:べに | 作成日時:2017年2月24日 8時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。