�� 3 ページ4
「この店、どうするんや？」
しばらくの沈黙のあと彼が口を開いた。
「畳むしか…ないと思ってます。…取り敢えず今は学校の授業も一通り終わって、自宅学習期間で…あとは卒業式を迎えるだけなので、それまではお店続けられると思うんですけど、私も春から大学生ですし…。両立は難しいかなと…。」
直接顔を見て言うことができず、カラになったグラスを、申し訳ない気持ちで見つめる。
固定客が多いこの店を畳むことは正直したくなかったが、来年度からの生活を考えると、そうせざるを得なかった。
「せやろなぁ……。店畳むんは寂しいけど、婆さん、Aちゃんのこと大学に入れようと必死やったもんなぁ。」
「そうなんです……。祖母の気持ちを無駄にすることはできません。………でも、まだ気持ちは揺らいでるんです。ここは、私の居場所でしたから。」
真島の空のグラスに酒を注ごうとすると、彼は「や、今日はもうええわ。」と言い席を立った。
「ま、ゆっくり考えたらええ。春まで時間はある。まだ、気持ちの整理もついとらんやろ？」
「そう…ですね。そうします。真島さん、ありがとうございました。」
急いでカウンターの方に回り込み、先程のように深々とお辞儀をすると、真島は頭をポンポンとやさしく撫で、いつものようにﾋｯﾋｯﾋと笑った。
「ワシにお礼なんて要らんで〜。そんなにヘコヘコしとったら婆さんにも笑われてまう。しゃんとせい。」
その言葉についに涙を流してしまう。
「真…島さんっ…」
彼は手袋を外し、頬を伝う大粒の涙を優しくぬぐい取ってくれた。
「すみませんっ…ほんとに、真島さんにはいつも助けてもらってばかりで、なんにもお返しできずに…」
「助けるなんてそんな大層なことした覚え無いで。わしはただ、酒飲みながら婆さんに愚痴聞いてもろたり、人生相談したり、看板娘にセクハラしたりしてただけや。」
そう言うと、すっと腰を引き寄せられ、優しく抱きしめられた。
ロッキーマン ブルーと煙草の香りで酔いそうになる。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 46人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
猫駅@駅伝&一色LOVE(プロフ) - とっても面白いです。こんなに面白いのに更新停止なのがもったいないです。頑張ってください。 (2017年3月21日 10時) (
レス) id: 052027a015 (このIDを非表示/違反報告)
アンナ - 続き気になるぅぅうう！！更新頑張ってください！ (2017年2月27日 23時) (レス) id: e0a57e2f8e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：紅子 | 作成日時：2016年6月20日 20時
