三十三話、イケブクロ ページ33
〈次は、イケブクロ、イケブクロでございます〉
そうアナウンスが鳴り響く。それなりに人がいる電車内で、数分の辛抱とはいえ神羅は震え、縮こまっていた。
「神羅、そう手を握り締めるな。血が出る…」
『っあ、ご…めん……』
無意識に恐怖からか手を強く握り締めてしまっていた神羅の手を開かせると小声でそう言った。
「どうぞ」
「ありがとうございます。神羅、降りるぞ」
『う、ん……』
駅員に車椅子用の板を用意してもらうと独歩は礼を言い、神羅に声を掛ける。
「えっ……と…二郎くんと……会うはずなんだけど…何処だ……??」
『ぁ、あそ、こ……じゃない……?……っひ、い、いっぱい…居る……』
「ああああ…ほら下向いてろ…」
独歩はスマホを片手に、駅の出口でキョロキョロと二郎を探す。神羅はそれらしき人物を見つけるが、人の多さに涙目になってしまう。
「あ、居た!!兄ちゃん、見つけた見つけた。うん。わかった。じゃあね」
二郎は誰かと電話をしながら神羅達の元へやってくる。
「…あー…取り敢えず着いて来いよ。荷物、持つから」
『えっ、あ、ちょ……!』
「おい神羅…!身を乗り出しすぎるな、危ないだろ」
『……ご、ごめん、独歩』
めんどくさそうに二郎は神羅の膝の上のトランクと紙袋を掻っ払うと、先を歩き始める。神羅はトランクを返してもらおうと、つい歩けていた時のように身を乗り出してしまう。
独歩は慌てて止め、二郎の後をついていく。
「ほら、此処だよ……どうやって登るつもりだったんだ?」
「あっああ……いや、その……あ、じ、二郎くん、車椅子の車輪を拭くものを持ってきて貰っても…?」
「え?ああ、わかった…ちょっと待ってろ」
二郎は萬屋ヤマダの二階や三階へ行く階段の前で止まると二人にそう言い、カンカンカンと三階へと向かった。
「あっ、独歩さん。無事来れたようで何よりっす」
「一郎くん…二郎くんのおかけだよ……俺だけだったらどうせ迷ってたし…」
「まぁまぁ……それで…神羅は本当にこんな…」
一郎は二郎と共に雑巾片手に降りてくると独歩と神羅にそう話しかける。神羅は返答できていないようだ。
「ああ…まぁ、そうなんだけど……取り敢えず神羅を運ぶから…その……車椅子の方を運んでもらっても、いい…かな……?」
「わかりました、二郎、そっちの車輪拭いてくれ。俺はこっちやる」
「うん!わかったよ兄ちゃん!」
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伏見桜(プロフ) - ちょっと待ってもう50話??????????ポッセ描いてたのにこれに気付いてタッチペン投げてしまった……。これも一重に皆様が読んでいただいておりますお陰です。誠にありがとうございます。 (2020年5月6日 2時) (レス) id: 3120be2f53 (このIDを非表示/違反報告)
伏見桜(プロフ) - 水月さん» ありがとうございます!!お久しぶりでございます、まだまだ終わりは見えませんがいつでもフルスロットルで頑張らせていただきます! (2020年5月1日 2時) (レス) id: 3120be2f53 (このIDを非表示/違反報告)
水月 - お久しぶりです!続編も見させて頂いてます!これからも更新頑張ってください! (2020年4月30日 4時) (レス) id: 13085b09f2 (このIDを非表示/違反報告)
伏見桜(プロフ) - 時神さん» ありがとうございます!!常に散々な目に遭う主人公ですがこれからもよろしくお願いします! (2020年4月20日 11時) (レス) id: 3120be2f53 (このIDを非表示/違反報告)
時神(プロフ) - たまたま見かけてシリーズ一気読みしました……すごい好きです更新頑張ってください!!!!! (2020年4月20日 11時) (レス) id: 6a39446066 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:伏見桜 | 作者ホームページ:
作成日時:2020年4月16日 1時