策士な御手洗翔太 ページ2
唇を掠めたそれが彼のものだと気付くのに何秒かかっただろう。両手で頬を優しく掴まれてそのまま、なんてどこの少女漫画だ。先程まで私の膝の上で眠っていたあどけない少年は一体どこへやら、悪戯が成功したみたいな悪い笑みを浮かべて翔太は手を離す。私はというと、銅像だ。時が止まったみたいに身体も思考も働かない。認めよう、たった今成人済みのおばさんは14歳のアイドルに翻弄されていた。おばさんじゃない。まだ20代前半だ落ち着け私。
Aさん?目の前をひらひらと仰ぐ華奢な手にハッと意識を戻す。
「しょ、しょうた」
「あはは!Aさん真っ赤〜。茹でたこみたい」
「翔太」
「からかってないよ」
やけに揺るぎのない言葉が返ってきたものだから思わず口を噤む。これが4月1日の出来事ならばまだ笑えただろうか。否、きっとエイプリルフールであっても彼の雰囲気に飲まれてしまっていたことだろう。それほどまでに彼の瞳は真っ直ぐに私を貫いていた。
ちゃんと言わないと伝わらなそうだもんね、Aさんは。なんて笑って彼はわざとらしく姿勢を正して「好きです」という。順序が逆だと教えたい。
「え、っと……嬉しくない訳じゃないけど年齢的に」
「僕が20歳だったら好きになる?」
「いや、その。翔太は可愛い弟……みたいな感じだし」
「Aさん」
もう一度頬に手が添えられるものだからぎゅっと目を瞑ってしまう。いや何構えてんだわたしは、満更でもない自分に嫌気がさす。瞼の裏で優しく笑う彼の気配がして、やがて額に降ってくる感触。思わず目を開けて双眸に映した彼の表情に見惚れてしまう自分がいる。
「僕、Aさんが望むならかっこよくもなれるよ」
唇じゃなかったことが残念、なんて、そんな。
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おむらいす(プロフ) - ふわふわさん» 読んで頂けただけでなく、そんな風に言って頂けて本当に本当に嬉しいです。とても、励みになりました。更新ペースは遅いですがまた立ち寄って読んで頂けたら幸いです。ありがとうございます! (2018年3月25日 0時) (レス) id: 64dc1c1c42 (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわ(プロフ) - 素敵な作品に出会えて、とても嬉しいです。お身体に気をつけて、更新応援しております。 (2018年2月26日 17時) (レス) id: 3dcd01e362 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おむらいす x他1人 | 作成日時:2017年10月24日 3時