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『こんばんは』
「…あァ」
縁側でお酒を飲んでいる彼の背中に声をかけると、少しだけこっちに振り返り私の姿を確認するとお酒を煽った。
一か月も経つとお互いに慣れてくるもので…
最初の一週間はマジで追い出されたと思ったら何故消えたのかと訳の分からんこと聞かれたり、海楼石の手錠はめられたり…まぁ、とりあえず色々あったと述べておこう。
『おー今日は満月ですか。あれ、もうお酒やめるんですか』
私が縁側に腰を下ろすのと同時に立ち上がった彼に声をかける
「お前が来る前から飲んどる、それに…酔いが醒めた」
『…』
私を見てお酒の気分じゃなくなったとでも…なんて友人を相手にするようなこと口が裂けても言えるわけないけどその大きな背中を見送りつつ、心の中で悪態ついた。
ボケーッと夜風にあたりながら、満月を眺めていると視界の上からこの季節には嘆かわしいマグカップが下りてきた。
『ありがとうございます』と熱いお茶が淹れられたそれを受け取り、ふーっと息を吹きかけズズっと一口だけ流し込み、残りは冷めるまで放置。
やっぱりデカいなー、なんて今更ではあるが再び縁側に腰を下ろす赤犬を横目に話題を探す。
『そういえば"あれ"試してないですね』
「あれじゃ分からん」
そりゃそうだ。
『"朝まで起きてる"』
「追い出したとき、…まさか」
『外で寝ました』
「それでも女じゃろうが、どんな時も気ィ張っとかんかい」
アンタが追い出したんだよ、"それでも"ってなんだ"それでも"って。
『ま、明日もあるんで寝ますけどね』
こっちで寝ないと起きれないみたいだし。
「いや…、試す価値はある」
『なんの価値が「"今後"の為だ」
あー、なるほど。
サカズキさんもいい加減私に会うの嫌になったか、私もそろそろ他の夢見たいし。
next＿〇
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作者名：Marubox | 作者ホームページ：https://twitter.com/maru_kibun
作成日時：2020年8月25日 18時
