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祭りの前 *過去作からお読みの方はコチラから) ページ4

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《当たり前》って何だろう




そんな事言うのはきっと、捻くれた人か、面倒くさい人だと思う


……普通は。




登校して、授業受けて、友達とご飯食べて、部活して、家に帰ると家族と過ごして、寝て起きて

その繰り返しの上に《当たり前》の日々は存在している




じゃあ、それが崩れたら?

若しくはそんなもの、端から無ければ?






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浮上する意識の中で最初、身体が凄く怠いな、とぼんやり思った

上がる意識に比例して身体は下に、泥に沈む様に重くなっていく


目を開けるのすら億劫な程だった



『__っ……、…?』



うっすら開いて霞む視界に混ざる黒

ゆっくり瞬きすると、黒は次第に鮮明に。輪郭が出来て、瞳は溢れそうなくらい見開かれている


その表情に自然と頬が緩む



「A……?」



理解が追いつかないのか、口は開きっぱなし、瞬きもしないし、何だか泣いちゃいそうになってるよ、恵



目覚める前は制服だったのに、今は私服

多分、ちょっと長く寝てしまったんだと思う


でも、ずっと近くに居てくれたんだ



『ふへへ』



恵は、私にとって《当たり前》で大切な存在なんだよ

だって、居てくれただけで、こんなに幸せで安心出来るんだから



精一杯、腕に力を込める

鉛のような重さも怠さも押し退けて、身体を起こす

そして、倒れ込むように恵に抱きつく



『やっぱり落ち着くや……
側にいてくれて ありがとう恵』

「……あんま 心配させんな」



胸から聞こえる心音も

髪を撫でてくれるのも

声も匂いも温もりも全部全部


落ち着くなぁ、ずっとこのままがいいよ





大切な人が近くにいてくれる、頭を撫でてくれる

ただそれだけの《当たり前》



でも、呪術(私達)の世界では、それすら《当たり前》にはならない


明日崩れてもおかしくない


だから、こんな些細な《当たり前》も大切に思えるのかもしれないけど




《当たり前》を積み重ねて、積み上がると、漸くそれは《日常》と呼べる




一度は崩れてしまった《日常》




もう、壊したくない



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作者名:さくや | 作成日時:2023年10月10日 17時

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