...... ※ ページ12
.
砂塵が視界を覆い、舞い上がった木片がパラパラと落ちる音がする
秤が歩く先には木を破って転がり、土で汚れた宵宮
「オマエ、強いんだろ。五条さんが俺と試合させるなんてそうそうないからな
おい、こんなもんじゃねえだろ!?」
『痛い……全然反応できなかった
でも、
__これくらいじゃないと!』
ゆっくり身体を起こして座ると、独り言と共にゆらゆら身体を揺らす
そして言い終わったタイミングで秤を見上げた
「(コイツ笑って__)
__ ッ!!?」
瞬きの間に姿が消える
辺りを見回そうとした秤の視界の末端、死角とも言える程端っこに、今にも自分を蹴り上げるAが映った
_
_
9月下旬 稽古場にて
体術訓練初日
ある程度Aの動きを見た五条は首を傾げた
「宵宮さ、体術どう習った?」
『お家に居た時に基礎を遊び程度で。それ以降は体育の柔道くらいです』
「Aからは習わなかったの?」
『一度頼んだ時に、“お願い、それだけは諦めて”って、凄い嫌そうだったので諦めました
必要性もあまり無かったですし……』
「Aは体術に関してはクソ雑魚だったからね
にしても……ふーん、それならなかなか面白いね」
『?』
_
_
「あと2分〜」
「さっきからうるさいの止まらないけど、Aちゃんホントに大丈夫?」
試合を始めて、森中に反響する衝撃音は止まる所を知らない
しかし観戦の二人には木が障害となって状況を把握できない
「気になるなら__お、そろそろじゃない?」
衝撃音の元が徐々に近づいてくる
先に飛び出してきたのは秤
続けてタンタンッ、と木々を足場に立体的な動きで秤の死角を取ったAが攻撃を仕掛ける
秤はそれをいなすと、直ぐに反撃
秤もAも同じ表情で、勝負を楽しんでいるのが分かる
二人はその場で応酬を繰り返し、Aが吹き飛ばされたタイミングで、
場を変えるように森に入り衝撃音はまた遠ざかっていった
「え何、今のAちゃん……!?金ちゃんと凄くいい勝負してる!?」
「想像以上に動けるね
“覃己”の特性とも相性良いし、今後が楽しみだよ」
_
吹き飛ばし、投げ飛ばし、何度地面に転がしても、起き上がってくる
ただただ楽しそうな笑みも崩れない
「(何だこの違和感……殴ってんのに、ちゃんと入ってる気がしねえ。ピンピンしてるしな)
__面白れぇ。アゲてくぜ 宵宮ぁ!」
『っはい!』
.
176人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:さくや | 作成日時:2023年10月10日 17時