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砂塵が視界を覆い、舞い上がった木片がパラパラと落ちる音がする

秤が歩く先には木を破って転がり、土で汚れた宵宮


「オマエ、強いんだろ。五条さんが俺と試合させるなんてそうそうないからな
おい、こんなもんじゃねえだろ!?」

『痛い……全然反応できなかった
でも、初めて(・・・)の対人戦……
__これくらいじゃないと!』



ゆっくり身体を起こして座ると、独り言と共にゆらゆら身体を揺らす

そして言い終わったタイミングで秤を見上げた



「(コイツ笑って__)
__ ッ!!?」



瞬きの間に姿が消える

辺りを見回そうとした秤の視界の末端、死角とも言える程端っこに、今にも自分を蹴り上げるAが映った



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9月下旬 稽古場にて

体術訓練初日


ある程度Aの動きを見た五条は首を傾げた


「宵宮さ、体術どう習った?」

『お家に居た時に基礎を遊び程度で。それ以降は体育の柔道くらいです』

「Aからは習わなかったの?」

『一度頼んだ時に、“お願い、それだけは諦めて”って、凄い嫌そうだったので諦めました
必要性もあまり無かったですし……』

「Aは体術に関してはクソ雑魚だったからね
にしても……ふーん、それならなかなか面白いね」

『?』



_
_




「あと2分〜」

「さっきからうるさいの止まらないけど、Aちゃんホントに大丈夫?」


試合を始めて、森中に反響する衝撃音は止まる所を知らない

しかし観戦の二人には木が障害となって状況を把握できない


「気になるなら__お、そろそろじゃない?」


衝撃音の元が徐々に近づいてくる


先に飛び出してきたのは秤

続けてタンタンッ、と木々を足場に立体的な動きで秤の死角を取ったAが攻撃を仕掛ける

秤はそれをいなすと、直ぐに反撃


秤もAも同じ表情で、勝負を楽しんでいるのが分かる


二人はその場で応酬を繰り返し、Aが吹き飛ばされたタイミングで、
場を変えるように森に入り衝撃音はまた遠ざかっていった



「え何、今のAちゃん……!?金ちゃんと凄くいい勝負してる!?」

「想像以上に動けるね
“覃己”の特性とも相性良いし、今後が楽しみだよ」


_



吹き飛ばし、投げ飛ばし、何度地面に転がしても、起き上がってくる

ただただ楽しそうな笑みも崩れない



「(何だこの違和感……殴ってんのに、ちゃんと入ってる気がしねえ。ピンピンしてるしな)
__面白れぇ。アゲてくぜ 宵宮ぁ!」

『っはい!』


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作者名:さくや | 作成日時:2023年10月10日 17時

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