chapter 74 ページ24
*
『石川くん』
「―――」
『…石川くん!』
「―――えっ、あ、はい」
気が付くと、目の前で心配そうな顔をするAさん。
『どした?調子悪い?』
そう言って俺の額に手を伸ばす。
「―――っ」
いつもだったら喜んでその手を受け入れるのに。
俺はスッと、自然と身を引いていた。
「や…、大丈夫です」
(だってAさんは、もう―――)
『…そっか。なら良いんだ!』
一瞬、寂しそうな顔をしたAさんに
心臓がぎゅっとなったのを、俺は気付かないフリをした。
*
この一週間、石川くんとほとんど会話してない。
―――なんで?
まさか、
私の知らない間に、また接触禁止令が出たとか?
…それとも何か、嫌われるようなことしちゃったのかな。
『………』
バラバラバラバラっ―――
夜の練習が終わった静かな体育館で、籠のボールを床に広げる。
そして一つ掴んで、黒ずんだ部分をタオルで拭う。
『…よし、』
奇麗になったボールを床に座り込んだまま、ひょいっと投げて
また籠に戻していく。
『………』
あんなにくっついてきた石川くんが
話しかけてくれなくなっただけで
なんでこんなに―――。
「A」
『………!マサ先輩、』
ハッとした。
黙々と拭いていたせいか、先輩が来たことに全然気づかなかった。
石川くんに距離を置かれて、一週間。
マサ先輩に告白をされてから、一週間。
『………』
マサ先輩は私の顔を見るなり
仕方ないな、とでも言うように笑い
そして私の髪をくしゃっと撫でた。
「元気ない」
『…そうですか?』
「祐希?」
『………え?』
うつむいていた顔をパッと上げると
さっきと同じように笑う、先輩。
*
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Yuri(プロフ) - KANNAさん» コメントありがとうございます(*´ェ`*)笑っていただけました??キュンキュンしていただけました??(;▽;)嬉しいです!!個人的に健太郎さんのギャグパートが書いてて楽しかったです。笑 お気遣いと労いの言葉にも救われる思いです…ありがとうございます( ; _ ; ) (2016年6月12日 16時) (レス) id: 258a85c425 (このIDを非表示/違反報告)
KANNA(プロフ) - キュンキュンもして・・・本当に楽しい作品です!お仕事の合間で負担になるかもしれませんが、もしまた新しいストーリーを書いて下さったら飛びついて読みます!笑 最高です!お疲れ様でした(*^^*) (2016年6月12日 15時) (レス) id: 35cc4c3b7c (このIDを非表示/違反報告)
KANNA(プロフ) - 読ませて頂きました。ストーリーもそれぞれの考えや言葉も本当に素敵で声に出して笑うこともあれば、 (2016年6月12日 15時) (レス) id: 35cc4c3b7c (このIDを非表示/違反報告)
Yuri(プロフ) - じじさん» コメントありがとうございます(;▽;)イキナリでも予告ありでもなんでも構いません!!嬉しいです!!(;▽;)幸せに…なってもらえたなら本当に、作って良かったなぁ!!って思います。ありがとうございます。 (2016年6月11日 3時) (レス) id: 258a85c425 (このIDを非表示/違反報告)
じじ(プロフ) - 初めまして。全部読ませてもらいました!とっても感動し、幸せな気分を味わえるお話でした(*^ω^*)作者さんの書き方?描写?がとっても好きです!!次作とか作る予定があればぜひ楽しみにしています゚(゚´Д`゚)゚。いきなりコメントしてすみませんでした(><)笑 (2016年6月11日 1時) (レス) id: 0114c047a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Yuri | 作成日時:2016年1月9日 0時