私は寂しかったよ。 ページ8
「おはようござい…あれ?」
ガチャ、とドアを開けて朝の挨拶をするが、シャムロックは見当たらない。
「シャムさーん…」
キョロキョロと部屋を見渡すと、テーブルの上に紙が一枚あるのを見つけた。
“A様へ
大変申し訳ありません。早朝から急用が入り、皆で出掛けております。
お昼迄には必ず帰ります。朝食は冷蔵庫に入っていますので、温めて召し上がって下さい。
シャムロック”
「シャムさん達筆…」
シャムロックの達筆ぶりに一人感心しながら、紙に書いてある通りに冷蔵庫を開けて朝食を取り出した。
レンジに入れて、ボタンを押す。しばらく待ってから取り出し、ちょっと熱くなった朝食をテーブルの上へ。
一人、手を合わせて。
「いただきます。」
黙々と食べ続ける。一人でご飯を食べるというのが、とても久しぶりに感じた。
食べ終わって食器を洗い、歯も磨いた。何もすることが見当たらない。絵の練習をしようとも思ったのだが、何故か気分が乗らないので止めた。
「んん〜」
ソファーの上で体育座りをして、膝に顔を埋める。チラッと時計を見ると、まだ8時だった。
「…テレビでも見よ」
リモコンの電源ボタンを画面めがけて押すと、朝のニュース番組のキャスターが大きく映し出された。が、すぐ画面が切り替わり、二人の男女が映る。
「____お父さん、と、お母さん…?」
_____それは、Aの両親だった。
母『もう、Aが居なくなって5ヶ月です。まだ何も手掛かりは見つかってません。でも、私たちはあの子が生きているって信じてます』
父『A、もしこれを見ているんだったら、どうか、帰ってきてくれ。そしてまた、三人で幸せに暮らそう』
その後もしばらく二人は画面に映っていた。
「___“また”?…お父さんは、幸せだったの?お母さんは、幸せだったの?」
思ったことをそのまま口に出す。今は誰にも聞かれない。そう思うと、無意識の内に声が大きくなっていった。
「そっかぁ。少なくとも私は、
________寂しかったなぁ」
少しばかり潤んだ目を荒く拭い、テレビを消した。
椿「Aちゃん、ごめんね。朝から一人に……寝てる」
数時間後、椿とベルが他より一足先に帰ってきた頃には、Aはソファーの上で小さな寝息を立てていた。
ベル「コイツよく眠るよねェ〜」
椿「…Aちゃん泣いてたのかな」
ベル「なんでェ?…あァ」
Aの顔にはうっすらと、涙の跡が残っていた。
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葵 - 続きを読むのが楽しみです!更新頑張って下さい! (2017年7月4日 22時) (レス) id: c2fac8b8e1 (このIDを非表示/違反報告)
佐糖さん。(プロフ) - 葵さん» 初めまして、ありがとうございます^^ やっぱりコメント貰うと嬉しくなって効率が上がりますね(単純)私が日々妄想してきたラストまであともう少し!それまで私の妄想に付き合って頂けたら嬉しいです! (2017年7月4日 0時) (レス) id: bb39dbcc66 (このIDを非表示/違反報告)
葵 - 初めまして!夢主ちゃんと椿さんがどうなってしまうのか、気になります!更新頑張って下さい! (2017年7月3日 23時) (レス) id: c2fac8b8e1 (このIDを非表示/違反報告)
佐糖さん。(プロフ) - 狐灯さん» ありがとうございます。血は結構な量でしたよ、その時着てた服は下着まで血みどろでした^^まあ、「お、なんかいっぱい血出てる」としか認識してませんでしたけど…笑 夢主ちゃんがこれからどうなるのかは…なにも言えませんね笑詳しくはwebで!(なにも載ってないです) (2017年7月3日 1時) (レス) id: bb39dbcc66 (このIDを非表示/違反報告)
狐灯 - 死ぬほど…!?む、無理しないで下さいね…?お話、凄く好きです!これからどうなってしまうのか…気になります…!女の子が、何を選択するのか…また、椿さん達と笑える日々が来れば良いなぁ…って、思ってしまいますね…(苦笑) (2017年7月2日 22時) (レス) id: 9ad341cd76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:佐糖さん。 | 作成日時:2017年1月15日 16時